【インタビュー】丸紅 大平裕一執行役員 ライフスタイル本部長

2018/07/04 05:30 更新



 丸紅のライフスタイル本部は、調達プラットフォームの高度化を推進している。製品OEM(相手先ブランドによる生産)で重要なファクターは、品質の安定、適時適量の供給だが、機械化、自動化にも積極的に関与することで顧客への対応力を高めている。OEMからODM(相手先ブランドによる設計・生産)へと商社のビジネスモデルが進化する中、昨年出資したトルコ・サイデテキスタイルの機能を活用し、企画力をさらに充実させている。

垂直かつワンストップの体制に

―繊維事業の現況について。

 おかげ様で我々のOEMビジネスは、優良な顧客との取り組みに支えられて堅調です。18年3月期は計画をクリアし、増収増益で着地しました。ファッション市況は天候などマイナス要因もありましたが、善戦したと言えるでしょう。

主力事業会社である、丸紅インテックス、丸紅ファッションリンク、丸紅フットウェアも堅調に推移しました。生産地に目を向けると、ASEAN(東南アジア諸国連合)へのシフトはそれなりに落ち着きを見せる一方、一部で中国に回帰した1年でした。中国の生産ラインは、機械化、自動化が相当進んでいますし、内陸部の開拓も加速しています。

―今年度の重点方針は。

 今期は中期経営計画の最終年度。計画をやり抜くとともに、次期の中計につながる1年にしたいと思っています。成長と機能拡充に向けて、4月に組織改編を実施しました。ファッションアパレル部と物資・フットウェア部を再編し、ライフスタイル第一部、第二部としたのですが、両部が各々ウェアもシューズも取り扱う体制です。垂直かつワンストップで顧客に商品を供給できる組織となっています。

 ライフスタイル第一部は、大手SPAに向けた製品供給が主力で、丸紅繊維(上海)、丸紅繊維亜太といった生産管理に携わる海外事業会社に加え、サイデテキスタイルも管掌しています。丸紅ファッションリンク、丸紅フットウェアなどを管掌するライフスタイル第二部は、ブランドマーケティングという切り口で運営しています。顧客のブランドを意識した提案に加えて、ブランドビジネスそのものも手がけています。

 機能繊維部はこれまでと同様、丸紅インテックスを中心とした産業資材の販売が主力です。不織布などで新たなビジネスを創造したいですね。これらの3つの部が計画達成に向けて注力しながら、成長戦略を描くという形で運営しています。

サイデテキスタイルに大きな期待

―デジタル化は重要なテーマ。

 全社的には4月、デジタル・イノベーション部が新設されました。ライフスタイル本部としてもデジタル化、イノベーションの推進は重要テーマですが、我々が考えるデジタル化は、まずは縫製の機械化による効率化と安定化です。労働集約型産業である縫製をいかに機械化して、誰もが熟練労働者と同様に細かな作業を効率的に進めることができるか。品質のばらつきや生産効率を改善し、品質とコストをキープすることが大事です。顧客が望むのは品質、納期、適正な価格です。安定供給の仕組みを機械化、自動化によって実現します。

SAIDE社のショールーム

―企画力の充実も鍵になる。

 企画力の充実、クイックな供給スキームも大切な要素です。その点で、10年ぶりの出資案件となったサイデテキスタイルには大きな期待をかけています。サイデテキスタイルは、英国・ロンドンのR&Dセンターによるトレンドを反映したデザイン、企画機能とトルコでの短納期生産機能を組み合わせたODM企業。ロンドンに1人、トルコに2人出向させるなど関係を強めており、アパレルのみならず生活関連商品へとカテゴリーを広げています。

 協業は非常に順調です。丸紅グループのアジアの生産背景を活用し、サイデテキスタイルのチャネルに乗せて供給するビジネスにも着手しました。もちろんサイデテキスタイルの超短納期型の仕組みをアジアに移管して、顧客に供給することも重視しています。世界で売れている物をリサーチ、即座に生産して顧客に供給する、というスキームを確立すれば、顧客に新たな価値を提供することができるかも知れません。

メレル、イフミーが揃って好調

―ブランドビジネスの状況は。

 丸紅フットウェアが販売する「メレル」と子供靴の自社ブランド「イフミー」が足並み揃えて好調です。メレルは、定番の「ジャングルモック」が20周年を迎え、今年はプロモーション等を積極的に仕掛けます。デジタル・イノベーションの一環で、メレルの一部店舗では、カメラを用いた顧客の導線分析を実施しています。実験段階ですが、新たな可能性に期待しています。

アウトドアブランド「メレル」

 イフミーは、子供靴ブランドとしての高い信頼を生かして、総合ブランド化に乗り出します。ソックスのライセンスビジネスがスタートしていますが、他のアイテムも展開する方針です。自社ブランドですので、日本だけでなく、グローバル展開も視野に入れています。

子供靴の自社ブランド「IFME」

2021年トピックス

最適なパートナーとして努力を惜しまない

 世界中から収集した最新トレンドをもとに、超短納期で供給するという、サイデテキスタイルの仕組みを、アジアに移植できているはずです。若い世代を見ていると、商品の買い方が大きく変わっています。3年後にはデジタルマーケティング、SNSが今よりもっと進んでいるでしょうし、物作りをする側も、消費者が求める商品を、よりスピーディに、多様な手法で供給する機能が求められるでしょう。そのためには調達プラットフォームを高度化することが不可欠です。顧客の最適なパートナーとして、自分たちの価値を上げていく努力をこれからも惜しみません。


Profile

おおひら・ゆういち

1963年2月28日 生まれ。 86年3月 早稲田大学商学部卒、 同年4月丸紅株式会社入社、2012年4月ファッションアパレル第一部長、

16年4月ライフスタイル本部長、17年1月ライフスタイル本部長兼機能アパレル部長、同年4月ライフスタイル本部長、18年4月 から現職。55歳。


https://www.marubeni.com/jp/

(繊研新聞本紙6月20日付け)




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