日本産酒類の輸出の拡大基調が続いている。国内酒類市場が縮小する一方で、23年の輸出金額は前年比3.4%減の1344億円と、過去最高を記録した22年に次ぐ水準となった。ウイスキーと清酒が輸出金額全体の68%を占め、日本産酒類の輸出をけん引する。インバウンド需要も高まる中、ジャパニーズウイスキーや清酒、日本ワインなど、高品質な日本産酒類を国内外へ提案する動きがさらに強まりそうだ。
拡大余地は大きい
23年の輸出金額の減少要因は、世界的な物価高や一部の国・地域における消費減退、米国における長引く在庫調整などの影響を受けたため。
輸出先の国別では、首位の中国が18%減の322億円、2位の米国が11%減の237億円と減少したものの、3位の韓国が156%増の143億円と大きく伸びた。
日本産酒類の輸出金額は、21年に初めて1000億円の大台を突破。22年は1392億円と大幅に伸長し、11年連続で過去最高を更新した。中長期的な視点で見ると、日本産酒類の輸出拡大の余地は大きいと見る関係者が多い。
国際品評会で評価
近年、日本産酒類は国際酒類品評会で高い評価を獲得するなどして世界的に需要が高まっている。中でも国産ウイスキーの人気が高く、20年には、ウイスキーの輸出額が清酒を抜き首位となった。
ウイスキー製造の小正嘉之助(こまさかのすけ)蒸溜所は、クラフト・ジャパニーズウイスキーの「嘉之助」ブランドの世界販売を30年に現在の5倍以上に拡大させる方針を掲げている。有力ワインインポーターのモトックスは、日本酒の輸出を強化する方針。海外市場に精通する強みを生かし、全国の優良蔵元とともに作る日本酒や、低温流通が必要な生酒などの輸出を拡大させる。今後10年間で輸出売り上げを現在の3000万円から8億円に伸ばす考え。
国内酒類市場が縮小する中、インバウンド需要への注目度も高まっている。酒類各社の中では、和酒をはじめ、ジャパニーズウイスキーやクラフトビール、日本ワインなど付加価値の高い日本産酒類を提案しようとする動きが強まりそうだ。酒蔵見学や地酒造り体験などに対するインバウンドの関心も高く、日本産酒類を体験する重要な接点となる。
(日本食糧新聞社・岡朋弘)