マッシュグループは、原料・生産工程、流通過程での環境負荷低減の取り組みを、客や取引先に分かりやすく伝えることに力を入れている。商品の下げ札にはどんな素材を使っているかが分かるアイコンを明記したり、取引先工場にはポスターを活用して、環境配慮への理解を深めている。
商品や工場を自社認定
マッシュスタイルラボは主力取引先とアライアンスを組み、独自の原材料採用基準を設けた。オーガニック素材、リサイクル素材、天然繊維の使用や、森林保護、海と水資源の保全、動物福祉などの7項目がある。
23年4月以降、全商品の下げ札に自社認定アイコンを表記している。分かりやすくイラストで明記することで、安心安全で環境に配慮した製品であることを消費者に訴求している。
岩木久剛執行役員生産管理本部本部長は「22年にサステナブル推進委員会が発足し、ようやく形になってきた。我々も取引先企業も環境配慮への意識が1ランク上がったように実感している」と話す。当初、基準をクリアした商品にはアイコンを付けるという発想からスタートしたが、現在は環境配慮型の商品の数を可能な限り増やすことに力を入れている。
独自の工場監査基準も作った。節電や節水に取り組んでいるか、それらの削減目標を立てているか、冷暖房の温度設定、窓の開け閉めで換気をしているかなどが基準になっている。監査結果に基づいてランク付けし、認定証も送っている。
現在、認証工場は日本で7、中国89、ベトナム2まで広がっている。「S」「A」ランクを取った工場の製品には、「エコファクトリー」のアイコンを24年秋冬物から付ける。
販売現場の士気高める
表示タグの意味や取り組みの狙いは、販売現場にも共有している。23年からは、自社の環境配慮への取り組みを伝える勉強会を店長を対象に実施した。
店長を通じて全国の販売員に広げていく仕組みだ。「サステイナビリティーを接客の常套（じょうとう）句で終わらせない。根拠のあるものにだけアイコンを付けているのだという販売員の理解が深まった」という。
商品での取り組みに加えて、24年2月からは物流倉庫を環境配慮型の拠点に移転を進めている。太陽光パネルや省水システム、LED、アメニティー設備なども充実し、環境に配慮した認証ランクを取得している茨城県常総市の施設「グッドマン常総」をメインの拠点にした。配送の効率化や、物流拠点間の移動の無駄を減らす。
ビューティー分野でも
服以外の商品では、マッシュビューティーラボのオリジナルブランド「セルヴォーク」と「スナイデルビューティー」「トーン」などで、パッケージに植物由来のバイオマスラベルを採用した。インクや粘着剤の原料の一部に植物由来の資源を使用しているラベルへと、他のブランドでも順次切り替えていく。
サトウキビの搾りかすを原料に使った、セルヴォークのアイシャドーのラベルは、パッケージデザインの世界的なコンペティションで「サステナブル部門」の賞を受賞した。
一緒に考える姿勢で
岩木久剛執行役員生産管理本部本部長に聞く
取引先の工場で働く方々が実行できる、環境配慮の取り組みを呼びかけています。決して命令的なものでなく、一緒に考えようと呼びかけるため、ポスターを二つ作りました。
一つは当社の事業規模やブランド、商品作りに対する考えを知ってもらうもの。二つ目は、工場で環境負荷を減らすための八つの行動をイラストで説明したものです。中国語とベトナム語版も作り、工場に認定証と一緒に渡しています。
主な内容はペーパーレスや節水、節電、ごみの分別など細かく多岐にわたるものです。「いつもありがとう」など、日頃の感謝を伝える言葉選びにもこだわっています。
中国の取引先工場に訪問した際、我々が配布したポスターをただ貼るだけでなく、項目ごとに切り抜いてごみ捨て場やトイレなどの各所で飾ってくれていたんです。提携する加工場や、社員がよく利用する近隣の飲食店のトイレにもあり、見つけた時は驚きました。
改めて、我々が大切にしているデザインの力を実感しました。一緒に考えようという姿勢と感謝が工場側にも伝わり、こういう広がり方をしたと思いました。
今後もデザインの力で、国境や業種を越えてこれらの取り組みを広げていきたいと考えています。
（繊研新聞本紙24年4月25日付）
