バスケットボールを題材にした漫画『スラムダンク』の映画『ファースト・スラムダンク』が大ヒット中だ。日本はもとより、アジアやイタリアでも人気だという。小学生にせがまれて映画館へ行ったが、単なる子供向けアニメではかたづけられない完成度に驚かされた。絵の描写力、CGを駆使した人物の動きの違和感のなさ、ストーリーの掘り下げ方、テーマ性。大人でも、バスケットボール初心者でも、十分はまる。実際、わが家は2回、映画館へ足を運んだ。
映画製作の背景を調べると、はまる理由も納得できる。09年にプロデューサーが原作者の井上雄彦氏に映画化を打診して断られ、そこから3本のパイロットフィルムを作り、14年の4本目でようやく承諾を得たという。
漫画は『週刊少年ジャンプ』で90~96年に連載されたもの。そこに新たな視点からの脚本と膨大なコマ割を作り、人の動きをデジタル的に記録するモーションキャプチャーの技術を取り入れた。30年前の作品を映画化する上で妥協したくない作者の思い、最新の技術を取り入れてリアルなバスケットボール漫画にするための製作陣の執念が感じられる。
漫画やアニメは、日本が世界に誇るコンテンツ。しかし、妥協できないところまで作り込むことは簡単ではない。服をはじめ、物作りには執念が必要な時もある。