《めてみみ》価格転嫁の難しさ

2024/04/25 06:24 更新


 「中小スーパーマーケットにとって、価格転嫁は容易ではないことを理解してほしい」。経済産業省が開いた懇談会で、全国スーパーマーケット協会の増井徳太郎副会長が強調した。経産省が流通業界6団体に中小企業の賃上げと価格転嫁の促進を要請、それに対する言葉だった。

 流通業界の受注側企業に対する価格転嫁は他業界に比べて進んでいない。吉田宣弘経済産業大臣政務官は、過度な安売りはサプライチェーンを脆弱(ぜいじゃく)にすると指摘。適正に価格を設定し、価格転嫁をすることで、取引先の賃上げにつなげてほしいと要請した。

 これに対し、多くの団体が価格転嫁の難しさを口にした。人手不足が深刻化している中、業績が悪くても賃上げを実施している中小企業はある。ただ価格転嫁については、大手小売業との値下げ競争が激しいためなかなかできないという。

 増井副会長は、「消費税率引き上げと軽減税率導入、インボイス制の開始などに伴うコスト増が中小店舗にとって大きな負担。今後は新紙幣発行に伴うレジ改修などのシステム投資もかかる。一方で、物価高の影響でお客の節約志向が高まっており、値上げできない」と窮状を訴える。

 政府は生産性と付加価値の向上による適正な価格設定を求めるが、特に中小企業にとっては簡単ではない。政府による総合的で、抜本的な支援策が必要だ。



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