《めてみみ》終戦と芸術文化

2024/08/15 06:24 更新


 ウクライナやパレスチナの紛争と並行して、台湾をめぐる情勢も不安定。世界中がきな臭くなる中で、平和の祭典とも呼ばれるパリ五輪が無事に閉幕した。不穏な空気を感じながらも、ひとまず胸をなでおろす。

 毎年のことだが、広島と長崎の原爆の日がある8月は戦争に思いをはせる機会が多い。特に今年は展覧会や演劇を通して、戦時下を追体験することができた。日本を代表するポップアーティストの一人で「プラダ」や「アディダス」などファッションブランドとの協業も多い田名網敬一の大規模回顧展もその一つ。アメリカ大衆文化が色濃く感じられる作品はどれも色鮮やかだが、その表現には田名網の記憶に鮮明に残る戦争体験が影響している。

 公演中の舞台NODA・MAP『正三角関係』も第2次世界大戦末期の日本の悲劇を描いた作品。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を下敷きに、花火師唐松一家の姿を様々な角度から描いている。空を見上げて未来を夢見る人々。彼らが絶望する姿はやるせない。

 戦争はファッション市場にも影響を与える。デザイン面はもちろん、ここ数年は、輸送コストの高騰や物流の遅れが続いている。キーウやテルアビブを拠点にするブランドが生産を休止している状況には心が痛む。8月15日の今日、79回目の終戦の日を迎えた。改めて平和を祈る。



この記事に関連する記事