帝人グループは長年、消防法の基準をクリアした防炎カーテンやその生地を販売してきた。帝人フロンティアは、東日本大震災をきっかけに防災用品の開発に力を入れ、今では他社製品も含めて「まるごと防災」としてトータル提案する。その旗振り役を務めるのが防災士でもある岸本隆久さんだ。「企業の取り組みだけでは限界がある」とまるごと防災協議会を設立。防災用品の普及や提言活動に力を入れている。
(高田淳史)
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単品提案の限界
岸本さんはインテリア担当時代から長年、防炎カーテンやその生地の販売に携わってきた。ただ「防炎カーテンは燃え広がりにくいが、火を消すものではない」と防災面では弱いと感じていた。同社が防災用品の開発に力を入れるきっかけになったのは東日本大震災。「地震後、火事が起きるケースが多い」と火元にかぶせるだけで火が消せるカーテン「プルシェルター」を開発した。プルシェルターはアラミドや難燃アクリル生地を使い、他社商材と組み合わせることで引っ張るだけで簡単にカーテンレールから外れるようにし、「消火器代わりにもなる」優れものだ。


災害大国である日本。「災害は火事だけでない」と次に開発したのが毛布が担架代わりにもなる「もうたんか」。毛布に複数の穴が開いており、災害時、要救助者をスムーズに運べる。「繊維の会社なので繊維関連商品を作ってきたが、繊維だけで防災は賄いきれないし、単品で提案しても限界がある」

火災、地震、洪水などを切り口に、他社にも声を掛けたところ、「悩みは同じだった」。今では自社商品に加え、家具の転倒防止器具や水位警報システム、自動ラップ式トイレなど他社商品も帝人フロンティアが窓口となり、「まるごと防災」としてトータルで提案。同社含め10社まで広がった。ただ「防災用品全体はまだまだカバーしきれていない」と参画社を増やしたい考えだ。
防災を自分ごとに
「少子高齢化により、警察、消防、自治体の人員も減る。自分の身は自分で守る時代になっている」と防災への意識も変える必要があると感じている。例えばプルシェルターのように普段の生活で使える商品を充実し、病院や学校といった施設や企業への提案を強めている。しかし、「提案しても意義よりも販売拡大のためと見られがち」と、ここでも壁に当たった。
打開しようと21年に立ち上げたのが一般社団法人まるごと防災協議会。様々な業種の企業と一緒になって、啓発活動や政府への提言作成などを進めている。「日本企業は技術力があり、優れた防災用品を作れる。しかし定期的、継続的に売れる商品は少なく、撤退する企業も多い。防災ビジネスが成り立つようにしたい」と国土強靭化計画などを追い風に、多彩な商材を様々な切り口で紹介し、防災用品市場を創出したいと意気込む。
