《連載・次代への襷》② オンワード樫山 (本紙1月8日付け)
2013/06/15 21:04 更新
トルソーやサンプルが立ち並ぶオフィスで黙々と仕事をこなすパタンナーの女性2人。下田絢子さんと黒田佳奈さんは昨年6月中旬から9月中旬までミラノのアトリエで、現地の第一線のプロと共に仕事をした。
オンワード樫山はグループのジル・サンダーへ中堅パタンナー2人を海外研修に出した。世界的にトップクラスのブランドのものづくりに参加することで、会社全体として製造企画部門の意欲を高めるのが狙い。
海外で働いてみて一番驚いたのは「欧州は洋服の歴史が長く、モデリストはリスペクトされる専門職。型紙を引くことに専念できる環境が整っていること」と下田さん。ミラノでは型を出すと隣のアトリエで即座に縫製してもらえる。そのため、アイテム別にパタンナーは特化されている。日本では中堅になると、フルアイテムを型紙、トワル作成、量産に向けた細かい作業まで担う。
一緒に行った黒田さんは「イタリアでは一人ひとりがプロフェッショナル。そこに至るまでは大変。ただ、現場の仕事は楽しい」ことを肌で感じた。2人とも現地の環境の違いやものづくりへの姿勢に大いに刺激を受けるとともに、初心に帰ることができたという。
今回の研修で外から日本を改めて見たことで強みも発見できた。欧州との違いでは、「オールマイティーな対応力と手先の器用さは世界に通じる」(下田さん)ものを持っている。さらに「日本人はきめ細かい気配りが得意で、縫製技術も優れている」(黒田さん)ことを再認識した。それらを裏付けるかのように、欧米の有力ブランドでは日本人の先輩パタンナーが重宝されている。 今はゼロからじゃなくても服が作れる時代。だからこそ、「ブランドのオリジナリティー作りにパタンナーが担う役割は大きい」と口を揃える。この貴重な経験を社内で共有し、地道な日々の仕事に生かしていくことで次のステップが見えてくる。
【企業メモ】創業=1927年▽本社所在地=東京都中央区▽業種=紳士服、婦人服、子供服、きもの、身の回り品などの企画・製造・販売