20~21年秋冬ピッティ・イマージネ・ウオモ 「ジル・サンダー」ウェスタン取り入れた端正なテーラード

2020/01/14 06:29 更新


  【フィレンツェ=小笠原拓郎】20~21年秋冬メンズ市場を占うピッティ・イマージネ・ウオモは、ファクトリーを中心とする出展者が新しいスタイルを見せられないままに終了した。ライフスタイルの変化に対応する新しいメンズスタイルを出せるのは、デザイナー。出展ブースに新鮮味がない分、招待デザイナーのコレクションが輝いて見えた。

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 「ジル・サンダー」の会場となった夜のサンタマリアノヴェラ教会。回廊を抜けてたどり着いた空間には、うず高くマリーゴールドの花が積まれている。華やかな香りに包まれて、新作が披露された。襟もボタンもないミニマルなコート、白いスーツにウェスタンシャツのようなヨークのディテール、シャツはつけ襟のような切り替えから小さなタッセルが揺れる。テーラーリングは肩でホールドしてボックスのように流れる構築的なシルエット。それはまさに初期ジル・サンダーのテーラーリングを思い出させる。


 コートの胸元にストリングスを飾り、ダブルフェイスのシャツにはコンチョのようなボタンを飾る。上質な素材を生かしたミニマルなアイテムにわずかな装飾が抑制のある美しさを生み出す。

 シャツに描かれたにじんだような抽象柄は、藤田嗣治をテーマにしたかつてのコレクションとも重なる。袖のないコートとメルトンコートのレイヤードなど、どこかノマドを思わせるイメージがルーシー&ルーク・メイヤーのジル・サンダーの特徴なのかもしれない。柔らかなニットのロングベスト、ダブルフェイスカシミヤのきものコートは、丁寧に作られた美しい製品でありながら意外に誰も持っていないアイテムでもある。

 もう新しいものなどなかなか見つけられない時代に、新鮮な気持ちを呼び起こされる。スーツスタイルが市場からなくなろうとしているときに、新しいスーツスタイルを出せる。それはファクトリーブランドではなくデザイナーブランドの役割であると改めて考えさせられた。


(写真=ブランド提供)

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