日本式プレゼンでは伝わらない?ーJETRO商談会(阿賀岡恵)

2015/04/19 00:00 更新


2015秋冬のセールスシーズンが終わり、繁忙期が少し落ち着いてきました。今季の新しい動きとしては、JETRO(ジェトロ)が主催する海外セレクトショップバイヤー商談会に参加してみました。これが中々興味深いものでしたので、今回はこの事についてレポートしようと思います。

ジェトロのファッション産業課が主催するこのイベントは、年2回東京のファッションウィークに合わせて開催されています。その期間に海外の有力セレクトショップのバイヤーを招聘し、公募から選ばれたブランド(アパレル企業)との商談の場を設けてくれるというものです。

事前にジェトロ側に提出されたブランド資料を基に、招聘されるバイヤー達が興味のあるブランドをピックアップし、それをジェトロがマッチングさせるという方式です。大枚はたいて海外の展示会に出展するより、何だかとっても効率の良い方法のように感じます。 ジェトロは行政の機関なので、大大的に人に目に触れるような告知をしません。

なので、ちゃんと自分で注意してイベント情報を見ていないと、見逃してしまいます。でも民間企業ではないので、イベント参加料などの手数料を取ったりしません。せっかくジェトロがこんないい企画をしているのだから、海外に販路を広げたいブランドは活用しない手はありません。

今回、我がAYAME SOCKSは初めての参加だったのですが、結果から申し上げますと、招聘されている5社のうち2社からその場でオーダーをもらえ、1社は今もメールでやりとり中という、なかなかの高打率でした。

商談会はホテルのバンケットルームで行われ、1社5分ずつのプレゼン方式。招聘されたバイヤーは、各社プレゼンをひと通り聞かなくてはならないシステムになっています。


 

 

今回いい結果でホクホクしている私ですので、一体どんな動きをして、どんなセールストークでプレゼンをしたのか僭越ながら少しご紹介いたしますね。

まず、前日に代官山のレストランで開催された、招聘バイヤーとの交流会に参加してみました。これは任意参加で、美味しい食べ物と飲み物がサーブされたのでもちろん有料。ちょっとした出費でしたが、せっかくの機会だし、事前の情報収集になるかなと思って一人で参加してきました。

交流会は立食パーティー式で、バイヤーさんが一人ずつ簡単な挨拶をし、その後はフリートークという、シャイな日本人には少々難易度の高いものでした。

招聘されている海外バイヤーさん達も其々に通訳さんがいるとはいえ、何となく外国人は外国人だけで歓談している、みたいな感じになってしまい、シャイな日本人の私は、会話に割って入って行きにくいな~、なんて思っていたのですが、時間も無かったのでサクッと5人のバイヤーさん全員に話しかけてみました。

和やかなパーティーとはいえ、別に遊びに来ているわけでは無いのでさっさと本題に入り、その人の担当商材と今期の予算がどのぐらい余っているか、バイイングする気があるのか、それとなく聞いてみました。 調査結果は以下の通りでした。

■ニューヨークの百貨店S社 招待されていた人は副社長で、私はバイヤーではありません、と言っていました。いい商品があったら担当のバイヤーに紹介します、と言っていましたが、こういう場合のこれは殆ど意味を成しません。 大きい会社で、いい会社であればあるほど現場の担当バイヤーにバイイングの権限があり、その人の意見を尊重しますからね。行政からの招聘、オイシイ出張は上司が独り占めって事ですかね。もー。はい次。

■フランクフルトの有力セレクトショップF社 ここのお店は事前にAYAME SOCKSに興味があります、と先方から打診していただいておりました。オーナー夫妻が来ていたので、当然バイイングの権限があります。レディスもメンズも取り扱っているとの事で、好感触でした。

■パリの人気ショップM社 ここはレディスのバイヤーさんが招かれていて、個人的にAYAMEの靴下は好きだけど、お店のテイストと合わないからバイイングはちょっと無理かなー、との事でした。こうやってハッキリ言ってくれると助かります。パリにいる同社メンズのバイヤーさんは、このテイスト好きかもしれないから、紹介しておくね、との事でした。

■ミラノの百貨店が運営するセレクトショップE社 ここもレディスのバイヤーさんが来ていて、ウェアもアクセサリーも担当しているとの事で、バイイングする気満々でした。事前にジェトロを通して、AYAME SOCKSに興味あり、と連絡ももらっていましたので、話がしやすかったです。

■イギリスの百貨店S社 ウチは既にメンズの取引があります。来ていたのはメンズウェアのバイヤーさんで、予算も少ししか残っていない、と言っていました。ちなみに大きな会社なので、靴下の担当者は別にいて、私としてはレディスのアカウントを開けたかったのですが、レディスのバイヤー室は違う棟にあるので、誰が担当者なのか知らないなあ~、との事でした。

ちなみにこの人、次の日の商談会には体調不良で欠席していました。午前中の体調不良って何でしょう?欠席って、この商談会の為に招待されたんじゃないのかい。苦笑

という感じで、5社の状況を調査し、この時点で、次の日の商談会での照準を定める事ができます。事前情報が分かっているだけで、だいぶ事がスムーズに運びます。

大きな会社のバイヤーであれば、その商材の担当者と話さないと意味が無いし、また、オーナー&バイヤーであれば多少の予算の融通が利きます。AYAME SOCKSの今回のターゲットは、5社のうち、ヨーロッパのセレクトショップ3社。次の日の商談会では、主にこの人達に向けたセールストークをしました。

 

 


今回、他の参加ブランドのプレゼンを聞いていて思ったことは、日本式のマインドでプレゼンすると、欧米のバイヤーさんには少し伝わりにくいのかな、という点です。

例えば、「私たちはこれまで海外の販路開拓に取り組んできましたが、中々難しく、今のところ海外取扱店は少ないです」と、日本語で聞くと別におかしくない普通のセンテンスも、英語にするとプレゼンの場には相応しくない一文になります。

英語を日本語に直訳するとものすごく傲慢に聞こえる事がありますが、それと同じように、美しい日本語の特徴である、謙譲するような表現は、そのまま英語にするとすごくネガティブなものに聞こえてしまいます。英語・ラテン語を話す民族の人が聞くと、なぜ今ここでそんな事を言う必要があるのか?と感じると思います。

これは、過去に私が海外の展示会に出展してきた歴史の中で、ウチのイギリスのエージェントC53にいつも注意されていました。今の言うべきじゃ無いよ、余計なこと言うなよ、って。

という訳で、私がヨーロッパのセレクトショップ3社に向けたセールストークはこんな感じ。

「皆様ごきげんよう、ようこそ日本へ! AYAME SOCKSは今年で8歳になる若い独立系のスーパーユニークな靴下ブランドで、日本では既に大人気です。そして、日本中のクールなお店で取扱中。海外販路はこれまでイギリスにフォーカスしてきて、結果として、イギリスの多くのキーアカウントで取り扱われています。今回、招待されている英国百貨店S社のバイヤーも既にAYAMEの大ファンらしいです。今日ここでAYAMEに出会えたあなたはとてもラッキー、ミラノもドイツもパリも、ちょうどこれから開拓しようと思っていたところだから、あなたの国での最初の発掘者になりたければ、今ここでオーダーしたほうがいいですよ。この機会を見逃すのはもったいない! よろしく!」

と、日本語で聞くと完全に狂っている傲慢なトーク。

しかも、ウソじゃない程度に少し膨らませて話しています。でもいいの、英語に訳したら別に変じゃないから。笑

という事で、ジェトロが主催するこのイベント、海外を目指すブランドは要チェックです!!

日々のことLIVEで更新中! AYAME SOCKSオフィシャルInstagram@AYAME_SOCKS


気鋭の靴下ブランドAyame’の活動記録。現在年2回、東京、パリ、ニューヨーク、ロンドンにてコレクションを発表、Made in Japanの靴下を世界に発信中 あがおか・あや/Ayame’socksデザイナー/桑沢デザイン研究所卒/2007年Ayame’設立



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