観光客や修学旅行生でにぎわう観光エリアの喧騒(けんそう)から少し離れた鎌倉市の住宅街に昨年1月にオープンした、えしかる屋。日常に溶け込み、暮らしに彩りを添えるエシカル(倫理的な)商品をセレクトしている。
(壁田知佳子)
相性の良い土地柄
えしかる屋の前身は、NPO(非営利組織)が運営していたエシカル商品のセレクト店で、東京・日本橋蛎殻町にあった「エシカルペイフォワード」。その店長を務めていた黒崎りえさんが独立し、オーナー兼店長として鎌倉に路面店を開いた。以前、近くで期間限定イベントを開き、エシカル商品との相性の良さを感じていた場所でもあり、黒崎さん自身も鎌倉が好きだったことから出店を決めた。
周辺には大型チェーン店はほとんどない。「肉屋、瀬戸物屋、パン屋などの個店・専門店が多く、その中に『えしかる屋』があってもいいのでは」(黒崎さん)と店名を付けた。そういった環境での買い物に慣れている人が、人の手で丁寧に作られた伝統的な商品や、ストーリーのある海外からのフェアトレード(公正取引)商品などに、価値を見いだしてくれているという。見た目が可愛かったり、作り手を感じられたり、「商品の良さの一部として、社会や環境に良いことを感じてもらっている」。
多種多様なアイテム
日常生活の中に溶け込む洋服やアクセサリー、バッグ、リビング雑貨、食品、書籍など多種多様なアイテムが揃う。付き合いのあるブランドは約100に上る。再生素材、ビーガン、伝統文化、フェアトレードなど、エシカルなポイントも様々だ。
コロナ禍でのオープンだったが、近隣をはじめ県内からの来店客があり、買い物を楽しんでくれた。今でも平日は近隣の人が多いが、週末には東京などからも来てくれる。様々な商品がある店内をじっくり見ながら、商品にまつわる話を聞き、1時間以上店内で過ごす人も多いという。
えしかる屋プロデューサーの稲葉哲治さんは、「地元に愛され、集える場所として、また、エシカルブランドに会いたい人・作りたい人のハブとして、エシカルの可能性を広げる場所にしたい」と話す。
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店舗を利用してワークショップやトークイベント、ファッションショーなどを開催している。6月は19日まで、10周年を迎えた10のエシカルブランドを集めた「10年目のエシカル展」を開催している。参加するのは「スルシィ」「アンドゥ・アメット」「マイテ」「フーヒップ」「コロリーダス」「メコンブルー」「アトリエふわり」「ドリプロ」「エダヤ」「アフリカローズ」。各ブランドの商品を展示・販売するほか、10年間の思いや苦労などをつづったメッセージを壁に展示している。期間中は、インスタライブ、ワークショップ、オンライントークショー、試飲会など、連日のようにイベントも予定している。
「理屈よりも、10年間継続してきたブランドの商品を見て、触れることで、何かを感じてもらえるのではと企画した。若い世代や学生にも知ってもらい、つなげていきたい」と稲葉さんは話す。