楽しい雑談から仕事の情報交換、悩みの相談まで何かと横のつながりが大事なファッション業界。ただ、コロナ禍以降は企業の垣根をまたいだパーティーや飲み会が減っているとの声もあります。今回のセンコミでは、業界人交流の火を絶やすまいと定期開催しているイベントに記者が潜入し、その魅力を伝えます。
フォーピープル「ファッションチューズデー」 データ管理で会話を広げる
アパレルに特化した人材紹介業などを手掛けるフォーピープル(東京、田中弘武社長)はバーイベント、ファッションチューズデーを運営している。その名の通り、毎週火曜日に東京・渋谷のバーを貸し切り、多様な顔ぶれが交流を深めている。

スタートは18年。現在の主力である人材紹介業を始めたタイミングで立ち上げた。田中社長は「目的は売り上げなど数字ではない。人を集め、リピーターを増やし、フォーピープルの認知を広げつつ、業界の力になりたい」と言い切る。平均して30人ほどが訪れ、若手から経営者まで参加層の幅も広い。

「これから業界で働きたいという人も歓迎」なため、学生や転職希望者が来ることも多い。2年ほど前からは大阪でも開催している。
各テーブルに必ず1人、フォーピープルの社員が座り、会話がスムーズに回るように手助けをする。初めて1人でやって来たという人でも安心して会話に入ることができ、孤立しない。

また、一度来てくれた人の職業や担当分野などを顧客台帳のように管理し、次回の来場時に参照できるようにしている。席ではデータを活用して社員が参加者を〝他己紹介〟することで、マッチングの支援も行っている。
「トミガヤ・ファッション・タイド」 招待制の〝濃さ〟を生かす
「トミガヤ・ファッション・タイド」(TFT)は月1回、東京・富ヶ谷のバーを貸し切って開かれる業界人交流イベントだ。販売員の竹井祐介さんとPR会社などを営む会社代表の早川泰輔さんで共同運営している。
24年5月に始めた。友人だった2人が会場となるバー「バイユー」で飲んでいた際、互いの人脈をつなげて交流の輪を作ろうと話をしたのがきっかけだった。参加は原則招待制だが、呼ばれた参加者は自身の知り合いを連れてくることもできる。参加者を一定絞り込む分、知り合いの知り合いの集まりになり会話が弾みやすいのがメリットだ。

企業の本部に勤める業界人などのほか編集者、フリーランスのPRやデザイナー、ショップの店主など多彩なバックグラウンドの人が顔を出す。毎回、食に凝っているモデルや居酒屋とダブルワークをしている古着店店主などが手作りするフードの販売も名物だ。

主催の2人がホストとして間に入ることで交流を促す姿勢も好評で、毎月参加するリピーターが多い。参加者からは「世代や業界を問わない縦と横のつながりができる」との声が上がっている。
竹井さんか早川さんのどちらかが主催を休み、知り合いの業界人に招待の声掛けなどを任せる施策も行っている。2人の人脈とはまた異なる参加者を招き、イベントに新しい風が入れることで価値を高めている。

ツナギジャパン「寄り道」 若手も楽しめるカジュアルな集い
東京・渋谷の古着主力の専門店、ツナギジャパンは月1回、店舗を会場に業界人交流会「寄り道」を開催している。約1年前のスタートで、当初は店主の井澤元気さんの知り合いなどを中心とした集まりだったが、人が人を呼び、今では毎回、店がいっぱいになるほど盛況だ。

普段から店頭で販売しているビールなどのドリンクを片手に語り合う気軽さが売り。料理自慢の業界人がフードを作り、販売することも多い。参加者はセレクトショップや百貨店のバイヤー、ショップ経営者、デザイナー、販売員、美容師、モデルなど様々だ。
井澤さんの明るく優しい人柄のおかげで、会場には和気あいあいとした雰囲気が漂う。「はじめまして」同士が仕事や趣味の共通点などで打ち解け、昔からの友達のように会話している姿も見かける。20~30代の若手が多いのも特徴で、駆け出しの業界人が人脈を広げる場として一役買っている。

今後はイベントをさらに発展させるため、会場の一角を小さな展示会や受注会、期間限定店の場として活用する。出展は無料とし、その分、新たな仲間を呼んできてもらうやり方でコミュニティーを広げる考えだ。「この場での出会いをきっかけに新しいカルチャーが生まれたらうれしい」(井澤さん)という。

「マイス」のファッションイベント 若者が着飾って集まれる場
大阪でファッション好きの若者が集まるイベントが盛況だ。主催するのは、EC軸のアパレルブランド「マイス」を運営する飯塚海さん。「買ったばかりのお気に入りの服を着て行きたくなるような場を大阪で作りたい」と、不定期で開催している。

飯塚さんは元古着店のオーナーで、現在マイスの運営のほか、堀江周辺に四つのギャラリー・レンタルスペースを持つ。アパレルブランドの展示会や期間限定店に貸し出すことが多く、ファッション関係者とのつながりも広い。
初めて開催したのは19年春。当初はマイスの期間限定店として企画したが、「東京に比べ、大阪にはファッション関係のイベントが少ない」と考え、交流の場へと発展した。中央区のデザイナーホテルで初めて開いた際は約400人が来場した。その後も年間5、6回ほど開いている。最も多い時は約1000人を集めた。
主な参加者は10代後半~20代半ば。ファッション好きの学生のほか、美容師や個店のスタッフなどが集まる。関西出身のモデルやインフルエンサーも招くことで集客にもつなげる。会場にはDJブースを設け、カメラマンが来場者のスナップを撮影するなど、ファッションイベントならではの高揚感を演出している。
イベントをきっかけに新たな出会いや仕事を生む狙いだ。「大阪のファッション商況を盛り上げたい」と意気込む。
