中国ビジネス4つの罠①「情報」(田中宏高)

2016/08/30 11:10 更新


こんにちは。合同会社T&Lコミュニケーションズの田中宏高です。早速ですが、前回ご紹介した「4つの罠」について説明します。まずは1つ目の罠、「情報の罠」についてです。

自分の国、日本人なら日本国内での仕事の場合、子供のころからの習慣や常識でほとんどのことが判断できます。ただ、外国では、習慣や常識で判断できないため、どうしても、情報に頼ってしまいます。



中国で仕事をしていると、「騙された」「話がころころ変わる」という人によく会います。その主な原因は下記の2つです。

 1.日本と中国の「差の大きさの違い」を無視している

2.情報源自体が間違えている

 


 

解説します。まず、1の『日本と中国の「差の大きさの違い」を無視している』です。

日本と中国を比較すると、中国のほうがいろいろな「差」が大きい。国土が広いから「地域差」、貧富の差が大きいから「個人差」、発展速度が速いので「時間差」、などなどの「差」の幅が日本のそれより大きいのです。

その分、日本より情報の精度は低くなります。情報源にもよりますが、「差」が大きい分、情報の精度は日本の3分の1程度と考えていいかもしれません。

たとえば、2年前に中国から日本に帰任した人の情報を頼りに中国に行くと、「聞いていた話と違う」ということはよくあります。

習慣や常識が通用しにくい上に情報の精度が低い分、それを補うために「知識」が必要です。これについては後日書きます(中国は発展速度が速すぎるため、法律やルールが現場に追いついていない場合も多々あります。この現場と法律・ルールの「差」が難しい問題ではあります。これについても後日書きます)。

 


 

次に2.の『情報源自体が間違えている』です。

例えば、日本では、税金のことは税理士や会計士に質問する。でも、中国に行くと、知り合いに質問している。そういう人が意外に多いです。

しかも、その質問に対して提供される情報は、専門家ではないので不正確な場合もあり、さらに、「差」を無視したものも多いです。聞いた側も自分の習慣や常識で判断できないため、鵜呑みにしてしまって、後々トラブルになることもあります。


 

 

例外はありますが、間違えた情報源の例が下記です。

□日本国内にいる人

;たとえ中国人であってもこれだけスピードが速い国ですから、住んでいないと分からないことも多いです。

□人から聞いた話をしている人

;数年前の情報かもしれません。別の地域の話かもしれません。内容自体にも枝葉が付いて実際と違ってしまっていることはよくあることです。

□専門家ではない人

;中国人だったら中国のことを何でも知っている、ということはありません。ビジネスに関することで考えると、日本人が日本の法律や税制、社会保障などを知らない人が多いのと同じように、中国人だからと言って中国の法律や税制、社会保障について「正確に」知っているとは限りません。

□メディア・書籍など

;日本のメディアも、中国に対して話を捻じ曲げて面白おかしくした内容や否定的な内容が多いです。また、「差」を無視したものが多いです。

 正しい情報源は、「該当分野の専門家」「現在、現場で実際に携わって実務をしている人(誰かに任せている人は不十分?)」です。もちろん、専門分野や関係分野以外は該当しません。それよりは少し精度が落ちますが、「いい結果を出している人」からの情報は、もちろん参考にしてください。

 ~今日のまとめ~

「中国ビジネスが難しいのではなく、間違えた情報が中国ビジネスを難しくしている」



田中宏高 たなかひろたか 合同会社T&Lコミュニケーションズ代表社員。72年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、アパレル商社に在籍。退社後、単身中国にわたり、ローカルの縫製工場で勤務。その後、上海にて百貨店の立ち上げプロジェクトに参画。同時に、販売現場の運営管理を経験。その後、独立。日中のファッションビジネスの経験を生かして、コンサルティングのみならず、中国進出日系企業支援、OEM生産、イベント開催、関連サイト・アプリケーションの立ち上げなど多岐にわたって活動中。著書「ビジネスで中国人に負けない本」(アスペクト社)



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