「メゾン・マルジェラ」のアーティスティックディレクター(AD)、ジョン・ガリアーノ氏退任決定のニュースが広がっている。フランスのメディアが「退任か?」という報道をしたのをきっかけに、フランス国内でも日本でも、もはや退任は決定しているかのような報道が続いた。
繊研新聞社は、この報道の経過を経てジャパン社を通じて本国に事実関係を確認した。その結果、「ジョンとOTB、メゾンとの関係は良好」と、改めて退任を否定した。SNS時代の情報の拡散スピードの速さに驚かされるとともに、改めてこの報道の背景に何があったのかを松井孝予パリ通信員に聞いた。
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「メゾン・マルジェラ」のAD、ジョン・ガリアーノ退任決定のニュースが広がっているが、その根拠は一体どこにあるのだろうか。このうわさは以前からあったものの、パリを拠点にするファッション産業情報のプラットフォーム「ファッションネットワーク」(FN)が7月22日に「ガリアーノがADの契約更新をしないと決意した」と報じたことで、一気に拡散した。
しかし、FNの報道はガリアーノ本人の発言ではなく、信頼性に欠ける。本報道では退任後に「おそらくフェンディに移るだろう」との見解も示され、その理由としてマルジェラでの報酬やインスタグラムの過去の投稿の削除、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下フェンディの経営トップ交代後のことなどが挙げられている。
これに対しマルジェラを所有する伊OTBは、レンツォ・ロッソ会長とガリアーノとの関係は「良好」であるとのメッセージを発表しており、LVMHもこの件について一切コメントしていない。FNの報道を裏付ける確たる証拠は現時点で見つかっておらず、ガリアーノ退任のニュースは信憑(しんぴょう)性に欠ける。今後の展開を慎重に見守る必要があるだろう。
(パリ=松井孝予通信員)