東京・北千住駅からバスで約20分。住宅が並ぶ一角に、打ちっ放しコンクリートの丸みを帯びた建物が姿を見せる。髙橋雄飛さんが手掛けるブランド「Oira」(オイラ)が昨秋オープンした旗艦店だ。24年春夏にデビューし、卸先は国内外17店まで広がっている。髙橋さんの膨大なインプットに裏打ちされた独自の思考と、それを反映したコンセプトや服作りが、じわりと支持を集めている。
(坂入純平)
「自分の名前を使うのは恥ずかしいが、全く関係ない名前も違う」。ブランド名は江戸弁で「自分」を意味する「おいら」に由来する。関西出身の髙橋さんにとって、「自分」は自身も相手も指す言葉だった。作り手の服であり、着る人自身の服でもある。その境界のあいまいさもオイラには含まれている。
考えを巡らせる癖
髙橋さんは兵庫県出身。山に囲まれた神河町の出で、子供のころは山遊びやサッカーをして活発に過ごした。一方で、家ではゲームよりもテレビや映画にジャンルを問わず夢中に。雑多な情報を受け取り、そこから考えを巡らせる癖はコレクション制作の原点の一つだ。
18歳で上京し、文化服装学院に入学。基本的な作り方を一通り学ぶと、自分の思うように服を作りたくなり、中退した。古着を買っては解体し、構造を独自に学んでいった。
その後、「両親に残りの学費で様々な経験をしたい」と直談判。それがかない、京都に移って古道具屋で働き始めた。働いては、買い付けを兼ねた旅に出る。そんな生活をしばらく続けた。アジアから欧州、米国西海岸、モロッコまで、興味の湧く土地へ足を運んだ。古い布も集め、それらをもとに一点物の服を作った。物がどこから流れてきたのか、土地にどんな歴史があるのか。関心を広げていった。
文化服装学院を辞め、ブランドを始めるまで約8年。歴史や映画、ファッションの文脈をひたすら掘り下げ、インプットし続けた。「考える」「旅する」「収集する」「空想する」「記録する」「感じる」――24年春夏から始まった6シーズンで、その8年で得たものを注ぎ込んだ。「この期間でブランドの核を築けた」という。

服を作る前の考え方
ファーストコレクション「001/I think」では、ジョージアの画家ニコ・ピロスマニと歌舞伎女形の坂東玉三郎、そして2人をそれぞれ題材にした映画に注目した。一見かけ離れた2人の間に、本質的に近いものを見いだしたという。2人の「完全な差異と両極性」を自身の物作りにも重ねた。ステートメントには「手縫い部分が多く、でもテーラーほど整っていなく、クチュールの要素も詰め合わせている」と、自身の物作りについて記している。

コンセプトを文章でまとめ、文脈を説明する。そのうえで、ファッションとしての文脈も意識して服をデザインする。「このやり方がオイラの方法論だったと思う。ブランドの精神性が大事で、それが定義できればこれからどんな服を作っても大丈夫」と話す。
6シーズンで形にしたのは、固定の意匠ではなく、服を作る前の考え方だ。何を見て、どう考え、どのように服へ置き換えるかを模索してきた。
