アートをトンネルの壁画に! NYらしい美化活動(杉本佳子)

2015/06/11 00:00 更新


 マンハッタン島の北西部、ハーレムよりもっと北にワシントンハイツと呼ばれるエリアがある。

 191丁目はワシントンハイツの中でも北の方で、このあたりは伝統的にドミニカ共和国の人たちを中心としたヒスパニック系住民が多い。



191丁目の地下鉄の改札口側のトンネル入り口


 その191丁目の地下鉄の駅の改札口を出ると、外に出るまでの間、約275メートルのトンネルがある。決して治安がいいとは言い難いエリアにある、長~いトンネル!ほとんど人がいないときに歩かないといけない時を想像すると、四半世紀以上ニューヨークに住んでいる私でもかなり怖い。

 エレベーターもあるのだが、これもあまり人がいないときの密室ということになると、ますます怖い!そのトンネルが最近、鮮やかなストリートアートの助けを得て大変身した。

 これは、ニューヨーク市運輸局が募集・選考したアーティストたちに描かせた壁画だ。



鮮やかな色のストリートアートのおかげで、薄暗く殺風景で不気味なトンネルがちょっと明るくなった


 目的は勿論、トンネルの美化。ニューヨークの家賃は軒並み高騰し、手頃な家賃で住めるところが非常に限られている。となると、今までは治安を考えて敬遠していたエリアに引っ越さざるを得ない人たちが増えてくる。

 ワシントンハイツも例外ではないだろう。少しでも安心して安全に暮らせる要素を増やそうというニューヨーク市の思いが、このトンネルアートにつながった。




テーマは違っても、どれも明るい色使いとダイナミックなモチーフで共通している


 4人のアーティスト及び1つのアーティストグループは5月半ばの週末、各自割り当てられた壁に思い思いに絵を描いた。募集要項には、経費も含めて最高1万5千ドルがアーティストたちに支払われると書かれていた。

 ジオメトリックな柄、トロピカルなジャングル風の絵、ミロを彷彿とさせるアブストラクトな絵がトンネルを彩る。

 床はまだ汚いが、以前のトンネルに比べたら、何倍も明るくポジティブな雰囲気になった。迫力あるメッセージも、夢を強調したいかにも若者向けのメッセージだ。




ストリート側の出入り口付近は、さまざまなメッセージのオンパレード


 トンネルから出てきたときに目に入るのはこの景色。周辺はアパートが立ち並ぶ住宅街だ。



トンネルから道をはさんだ反対側の景色


 ストリート側のトンネルの入り口。温かみのあるポップな色と、ウエルカムのメッセージが強調されている。



今までトンネルに入るとき、嫌だな~怖いな~と思っていた人たちも、このポップな入り口のおかげで、ちょっとは気楽に入れるようになっているのだろうか


 私が訪れたときは、お母さんが壁画をバックに小さな息子さんの写真を撮っていた。

 「一緒に撮りましょうか?」と声をかけて、母子のツーショットを撮ってあげた。そんな風に、明るい気持ちでこのトンネルを通り抜ける人たちが増えて安全に暮らせるエリアになることを、心から願う。



89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッシ ョンビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで 20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜 更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダム に紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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