1月11日から13日までフィレンツェにあるフォルテッツァ・ダ・バッソにてメンズファッションの最大イベントPITTI UOMOが開催されました。今回で第101回目、長い歴史を持つ展示会です。
今日のレポートではオミクロン株が広がっている中開催された、今回のPITTI UOMOの様子をご報告したいと思います。
PITTI UOMOは2020年、北イタリアから始まったコロナ感染の拡大で、その年の6月と昨年2021年1月の開催はキャンセルとなりましたが、昨年6月の展示会から再開されました。
私は前回(昨年6月)の展示会にも行ったのですが、その時の出展は約360ブランドで、本館とそのとなりのパビリオンしか使われていませんでした。本館も上の方の階は使用されていなかったと思います。ブランド数が少ないだけでなく、影響力のあるブランドの出展も少なかったので入場者も少なく、少し物足りなく思いました。私はフィレンツェに1泊したのですが、わざわざ泊まらなくても2、3時間あればゆっくり見ることができたほどでした。ちなみに展示会の開催日はいつもより少し遅らせ子供服の展示会PITTI BIMBOと同時に開催されていました。
イタリアは2020年、欧米の中で一番初めに大型感染が始まったことはみなさんもよく覚えていらっしゃると思います。亡くなった人も多かったので、イタリア人は割とまじめに国の決めた規制を守っていて、昨年の秋にはそれほど大きな感染もなく、そのため規制もほとんどありませんでした。私はイタリアに30年以上住んでいるのですが、イタリア人がこんなにきまりを守るとは思ってもいませんでした。
ということで、9月のレディースのファッションウィークの時期はコロナ感染者はそれほど多くなく、さすがに海外からのバイヤーは多くはありませんでしたが、たくさんのイタリア人バイヤーが展示会にも来場していました。活気もかなりあったので、寒い時期はどうしてもコロナ感染者は増えるとは思っていたものの、次の1月のPITTI UOMOはこの様子だともっと入場者も増えるだろうと思っていました。
しかし残念ながら年末ごろからオミクロン株が広がり始め、PITTI UOMO開催前ごろから毎日20万人近くの新規感染者が出ていたため、アルマーニがメンズのショーやパリで行われるオートクチュールのショーをキャンセルしたり、PITTI UOMOでも影響力のあるブルネッロ・クチネッリが出展を取りやめるなど、展示会直前まで実際に展示会は行われるのかどうか、という感じでした。いつもは割と早い時期からフィレンツェ行きの電車のチケットを買う私も、今回は展示会の始まる1日前まで様子を見ていました。
現在のイタリアのコロナ感染の様子
現在のイタリアのコロナ感染の様子ですが、1月17日の発表では、新規感染者228,179人、検査を受けた人数148万人以上、検査をした人の約15%が陽性だったことになります。ただ、陽性の人でも症状が現れなかったり、風邪とさほど変わらないくらいの症状の人も多いようです。イタリアではもう3度目のワクチン接種をした人もかなり多く、私も12月の始めに接種を終わっています。
ちなみにPITTI UOMOでお手伝いをしているあるブランドのディレクターと、そのブランドのブースで会うことになっていたのですが、彼女が来ていなかったのでどうしたのかスタッフに聞いてみると、「彼女は陽性だったので来れなかった」ということでした。それほど今では陽性の人が多いです。彼女とその後連絡を取り合ったのですが、幸い具合はそれほど悪くないとのことでした。
感染者は多いですが、国としても経済的ダメージが大きいので、現在はあまり厳しい規制はしたくないようです。
PITTI UOMOへの入場
フィレンツェ駅から行くと、会場にあたるフォルテッツァ・ダ・バッソの手前にあるヴァルフォンダ庭園でまずはスーパーグリーンパスを持っているかどうかのチェックがあります。グリーンパスとはヨーロッパ共通のコロナ専用の証明証で、ワクチン接種や事前に陽性かどうかの検査をしているかなどを証明するパスです。
※グリーンパスについての詳細はこちら
入場ルール
PITTI UOMOはコロナ感染防止の5つのルールを決め、これを守れない場合は参加できません。
- 展示会より前の事前登録及びチケットの購入
- ワクチン接種をした証明に当たるグリーンパスが必要(これは皆携帯アプリもしくはプリントアウトしたものの携帯が必要)
- 展示会ではFFP2マスクを使用(日本の防じんマスクのDS2に相当するもの、Filtering Face Piece)
- 展示会内のレストラン、バール以外での飲食物の提供禁止
- PITTIは赤十字社との協力で、入場者が陽性か否かの検査場を設け、必要であればそこで検査をするとこができる。
などの規制があります。
スーパーグリーンパスのチェックが済み入場できる人には手首にテープを巻かれ、その後はいつも通りフォルテッツァ・ダ・バッソのエントランスから入ることができます。その時に体温検査もあるのですが、空港にあるような検温器で体温の検査をしているので、入場はスムーズにできます。
会場の様子
昨年6月の展示会ではかなり入場者が少なかったですが、今回は海外からのバイヤーは少なかったものの、多くのイタリア人バイヤーが来ていました。また、これから少しずつ良くなっていきそうな活気というものを感じることができました。会場は予想していたよりもかなりポジティブな雰囲気でした。
いくつかのイベントはオミクロン株の広がりでキャンセルになっており、いつもは本館前に集まっているおしゃれさんは今回それほどいませんでした。
以前にも書きましたが、前回のPITTI UOMOではほとんどのパビリオンが使われていませんでした。今回はピッティ・ビンボ(子供服に展示会)のパビリオンも少しありましたが、多くのパビリオンは使われていて、それほど規模が小さくなったようには見えませんでした。
海外にエージェントを持っている日本のブランドはこれまで通り出展していたところもありました。ちなみに日本にOEMの製造をしているインドのあるブランドは、今回初出展していて、ブランドの人もインドから参加していました。
次回のPITTI UOMO
これは全く私の個人的な想定ですが、一般的にはコロナは冬には広がって夏には感染者も少なくなってくるのと、イタリアではかなりワクチン接種が進んでいるということで、次回6月の展示会ではこれよりももっと以前の展示会に近づいていくと思います。ヨーロッパ内では感染者が減ってくると行き来は簡単にできるようになりますが、日本の方のがコロナ感染予防のための日本と海外との往来の規制が厳しいので、日本からイタリアに来る場合、その時の国家間でのきまりがどうなっているかにもよると思います。
最近になってまた少し重症者が増えているものの、多くの人は陽性でも症状が全くなかったり、軽い症状だけで済んでいる人も多いので、以前ほど先に何が起こるかが読めないという感じではなくなってきています。これまでの2年間ファッション業界はほとんど動きがありませんでしたが、ここ最近はわりと展示会などでも活気が出てきているので、次のPITTI UOMOには日本からも参加できるようになれば、と願っています。
PITTI UOMOのくわしい様子はYouTubeでも紹介しています。会場内の様子は下記からご覧ください。
つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。04年2月から07年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、12年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する