バッグのアンバイ 自然の中、半日楽しめる大型店 地域活性化とファン作り両立

2021/11/15 06:28 更新


目の前には湖も広がる自然の中の立地

 バッグ製造卸・小売りのアンバイ(兵庫県三田市)が、4月に同市の青野ダム記念館を活用してオープンした「アンバイジェネラルグッズストア・サンダ」が、計画を上回る手応えを見せている。「ただ物を売るだけでなく、来た人が半日は楽しめる滞在型の店」(冨士松大智社長)と位置付け、多彩な品揃え、体験型アクティビティー、飲食店の併設などを盛り込んだ。自然の中にぽつんとある大型店で、客との深い結びつきを目指している。

(小畔能貴)

地元食材生かしメニュー

 アンバイジェネラルグッズストア・サンダは、三田市の所有する建物、青野ダム記念館を再利用する形で実現した。地域活性化が目標の一つになっている。「全国の都心でビジネスモデルを磨いてきたからこそ、ひらめくアイデアやネットワークを積極的に生かしたい」(冨士松社長)と、店作りに様々な魅力を詰め込んだ。

 目の前に千丈寺湖の開放的な景観が広がる店は、約500平方メートル。初の飲食店「アンバイボウルスタンド」を併設し、三田市産の米や野菜などを使ったオリジナルメニューを提案している。メニューはご当地食材を丼という形で手軽に味わえるもので、オリジナルのメスティン(飯ごう)付きで用意するなど、アウトドアらしい工夫も凝らした。

併設した飲食店「アンバイボウルスタンド」

多彩な品揃え、体験教室

 物販の方は、立地に合わせてアウトドア・キャンプ用品の提案を大幅に充実した。「都心にある直営店と違い、オフタイムを楽しめるモノ、自然と遊べる道具を大胆に集めた」(冨士松社長)というように、同社が代理店もしている「ミニマルワークス」「ベルン」など感度の高い用品を幅広くセレクト。広さを生かす形で、店内やウッドデッキ周辺に、タープテントやハンモックなどを設営し、来店客が実際に体感もできるようにした。

 フィッシンググッズ、木製スケートボード、サップボードなど、キャンプ以外のアウトドアグッズも国内外から多彩に揃えている。その中には、海外の電動アシスト自転車や電動ミニカーもあり、男心をくすぐる存在感を放つ。

 一方で、オリジナルバッグ「アンバイ」をはじめ、アパレル、雑貨や日用品のセレクトなどで構成する売り場も展開した。こちらは都心の直営店で得意としている品揃えで、文房具やヘアワックスなど都市部をイメージした個性的なライフスタイル提案を実現している。

アウトドア・キャンプ用品が多彩

 目の前の自然環境で楽しめる体験型アクティビティーの提案にも積極的だ。すでにサップ(水上スポーツ)教室を週5日ペースで行っているほか、釣り具一式のレンタルも実施している。どちらも売り場で提案するギアがある場所に、ポップを置いてアピール。購入しなくてもまず体験できるようにしている。

 電動バイクのレンタルも計画中。コロナ禍で進行していないが、湖畔でバーベキューもできるようになったら、新たな提案も考えている。

 オープンからもうすぐ5カ月。「車でなければアクセスしにくい場所なので不安もあった」が、客数は計画比1.5倍で推移し、「売り上げも悪くない」状況だ。週末はとくに来店客が多く、三田市内はもちろん、それ以外の場所からの来店もある。リピーターも着実に増え続けている。

 都心から車で1時間少しかかる。都心の商業施設が不特定多数をターゲットにするとすれば、ここは特定少数を狙うイメージになる。だが、来店者のモチベーションは高い。「わざわざここを目がけて来てくれるお客様一人ひとりと深いコミュニケーションを築いていきたい」と考えている。 

サップ教室も行っている

店の上に本社を移転

 オープンから少し遅れて、大阪市内にあった本社も同店の建物の2階に移した。上がオフィスなので、ディスプレーをはじめとした細かい修正もすぐに行える。泊まり込みで社員研修が出来るぐらいのスペースもあり、東京や名古屋、大阪の店舗スタッフも、すぐ下の売り場で多くのことを学べる。「ここで味わった経験を、それぞれの店頭で接客に生かせば、店の支持ももっと広げていけるはず」と期待している。

 本社の移転を機に、半分以上の社員が三田市に移住した。新たに同市に住む人材も7人雇用しており、店長や飲食店責任者として活躍している。「ファッション業界で磨いた感性を生かしたマップを作成するなど、様々な形で地域に貢献していきたい」と考えている。

 会社を代表する大型店のオープン、本社の移転を経て、取引先の反応も変わってきた。これまでなかった意外なブランドからの引き合いがあるほか、商業施設からの出店依頼も増えている。

 今後については、「様々な自治体と協力し、自治体の物件と当社のアイデアとを組み合わせた新店をもっと実現していきたい」考えだ。そのモデルケースである同店へ、視察を要望する声も届くようになった。

 バッグ以外のオリジナル商品の開発も強化していく。自然に囲まれた立地を生かしたキャンプ用品も視野に入れており、すでにベストやエプロン、コンテナボックスなどを商品化している。

この店を目がけて来てくれたお客を温かい笑顔で接客するスタッフ

ライフスタイル提案広げて

 アンバイは13年設立。オリジナルバッグ「アッソブ」の製造・卸販売でスタートし、翌年に原宿で直営店「アンバイジェネラルグッズストア」をオープン。大阪や名古屋などにも同店を広げ、現在6店を展開している。ライフスタイル提案を進める中で、自社以外のバッグ、時計ブランドなどの代理店もするようになり、近年はアウトドア用品ブランドの代理店も手掛けている。今上期(21年3~8月)は、ECやアウトドア用品の卸が伸び、売上高はコロナ禍前の一昨年度水準も大きく上回る勢いだ。

「アクセスは多少不便だが、来れば長く楽しめる滞在型の店を目指した」冨士松代表

(繊研新聞本紙21年9月22日付)

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