パリの偽ナイジェリアサポーター(小笠原拓郎)

2018/06/28 11:37 更新


毎年この時期に、メンズコレクションとオートクチュール取材でヨーロッパに訪れていると、当然のことながら4年に1回のワールドカップはヨーロッパで見ることになる。今までで一番激しかったのは、やっぱりフランスワールドカップであろう。フランスの試合が終わるまでショーが始まらなかったこともあった。

ファッションコミュニティとフットボールとは無縁にように思えるが、そこはナショナリズムのなせることなのか、意外に盛り上がる。かくいう私も実は幼少時はサッカー少年。日本じゃサッカーなぞ見ないが、ワールドカップとなるとそうもいかない。

今年のピッティ・ウオモの記念イベントで、クリステル・コシェがカスタムメイドをした各国代表のユニホームが販売されていた。盟友マスイユウは、クリステルのおすすめのアルゼンチン代表のユニホームをゲットしていた。私は、なんといっても今回のユニホーム人気ナンバーワンのナイジェリアのをゲット。それを着てパリを回るといろんな反応があって面白い。

メゾン・マルジェラのショーでは、スタッフが「俺、ナイジェリア出身」とボソッと呟いてきたり、ナイキストアに行ったら、「俺、ナイジェリア出身なんだけど、そのユニホームなんだ?ちょっと違うね」「フランス人デザイナーがカスタムメイドしたやつだよ」「超クールじゃん」ってな話になる。

一方、昨夜のアルゼンチンvs.ナイジェリアでは、私のユニホームを見るなり、ホテルのテレビ前に陣取るブルーと白のストライプのアルゼンチンサポーターがブーイングしてくる。いやいや、私、そんなにナイジェリアのファンでもないんですけど‥。むしろメッシの得点見たいんだけどなー、などと思いながら一緒に観戦。

結果的にアルゼンチンがグループリーグを突破して、アルゼンチンサポーターから「バイバイ、アミーゴ」と握手され、ちょっとしたサポーター気分を満喫した夜となった。私、偽ナイジェリアサポーターですけどね。


おがさわら・たくろう 20年近く国内外のデザイナーコレクションを取材してきた記者が、独自の視点でクリエーションを品定め。たまに得意の料理も披露します



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