ユニークで人気のある小さな書店 ダシュウッド・ブックス(杉本佳子)

2026/09/30 06:00 更新NEW!


内観

 ダシュウッド・ブックスは2005年、ノーホー地区の半地下にオープンした写真集中心の小さな書店だ。活字離れ、本離れと言われる昨今、この書店にはいつもコンスタントにお客が訪れる。しかも、ダシュウッド・ブックスのマネジャー、須々田美和さんによると、店に来るお客は年々増えている。扱っている写真集の品揃えは非常に個性的だ。ファッションブランドとのコラボもしてきている。

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 ダシュウッド・ブックスをオープンしたのは、イギリス人のデヴィッド・ストラトル氏だ。彼がニューヨークに移住したのは80年代後半。ファッションフォトグラファーになりたかったという。しかし写真家としての才能に自ら見切りをつけ、26歳の時、ニューヨークを拠点とする非営利の写真財団「マグラム財団」に入り、写真家のために本を作る側になった。そのマグラム財団を辞めた後、東京で「オンサンデーズ」を見て刺激を受けたストラトル氏。写真家や学生、ファッション関係者たちのコミュニティーになればと、ダシュウッド・ブックスをオープンした。

 仕入れる本は、ストラトル氏がいいと思った新刊、そして60年代から80年代の日本の作家のものが多い。元々ストラトル氏は日本の写真集が好きで、年1回神保町の書店めぐりをする。60年代から80年代の日本の作家のものは、特にパワーを感じているそうだ。須々田さんによると、多くの書店はブックコンテストで選ばれた本を扱うが、ダシュウッド・ブックスは、大きな組織が選んだ本はあえて扱わない。日本語が読めないストラトル氏は、あくまでもビジュアルだけを咀嚼して自信をもって選んだ本だけを店に並べる。美術館に評価される以前の才能を見つけるようにしているそうだ。それでもかなりの確率で売れるというから、ストラトル氏は「目利き」なのだろう。

 最初にダシュウッド・ブックスに来た時、エロい本が多いと思ったが、それは他のお客からもよく言われるそうだ。そして、そうした本は性別関係なく人気があるという。

エロい系の本

 顧客は写真家、スタイリスト、クリエイティブディレクター、医者、ソフトウエアエンジニアなど。ニューヨーク大学やニュースクールの学生も多い。年齢層は10代から80代まで。8割はニューヨーカーだ。アートフェアやブックフェアがあると、それに合わせて遠方から来たコレクターが、希少価値の高い本を求めて訪れる。

 須々田さんに常にお客が入っている理由を聞くと、「常にお客と関係性を築こうとしている。なるべく顔と前回何を買ったか覚えていて、積極的に本を勧めるなどの動きをしている」との答えが返ってきた。サイン会などのストアイベントも年に20数回開催する。2年前には、イーストビレッジに小さなギャラリー「ダシュウッド・プロジェクツ」もオープン。水曜日から土曜日まで開けて、写真を展示販売している。

 現在人気の写真集は、ニューヨーク在住のダニエル・アーノルドの「You Are What You Do」(75ドル)。ニューヨークのストリートをカラーで撮った写真で、気取らない自然体のニューヨーカーを捉え、色がきれいで温かみがある。アーノルドがニューヨークの映画業界、写真業界と繋がっていて、インスタグラムのフォロワー数が39万人以上いることが奏功しているようだ。作家自身の魅力も重要なのである。須々田さんによると、サイン会をすると1時間に100冊から200冊売れ、すでに2万部刊行された。

ダニエル・アーノルドの「You Are What You Do」

 ホンマタカシが職業別に人を撮った「Portrait of J」(70ドル)も人気がある。きれいでシンプルな中にその人らしさを写している点で、コレクターに人気があるという。

ホンマタカシの「Portrait of J」

 ソール・ライターの「The Unseen Saul Leiter」(55ドル)は、影と光をよく捉えていると評価され、日本でも人気があるそうだ。

ソール・ライターの「The Unseen Saul Leiter」

 コラボはかつてはグッチとしたことがあり、最近ではユニクロ、ユナイテッドアローズ、ロンハーマンとそれぞれTシャツなどの商品あるいはルックブックを制作した。

 須々田さんは、ダシュウッド・ブックスのマネジャーをする傍、2013年に出版社「セッションプレス」を立ち上げ、ニューヨークで日本やアジアの写真家の作品を広めようとしている。ニューヨークを拠点とする非営利の写真芸術組織「ペヌンブラ・ファンデーション」では、写真集を出したい人のために編集、マーケティング、ディストリビューションに関するワークショップもやっている。

須々田美和さん

 須々田さんにとって写真集とは、国籍や年齢、経済的バックグラウンドを超えて平面において公平に表現を競い合える場であり、そういう「民主的な場であるところがすごく好き」なのだそうだ。

 デジタル本やオーディオブックが広がる昨今、紙の、しかも重くて嵩張る写真集を求めて来る人が後を経たないダシュウッド・ブックス。これからも目が離せない。

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)



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