80年代のボリューム、ドレッシーな気分
【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】16~17年秋冬ロンドン・コレクションにはドレッシーな気分が広がっている。ダークなロマンティックが台頭する一方、アメリカンレトロや鮮やかな色、輝きを加えて陽気なムードを出す新進デザイナーも目立つ。
80年代の要素もメンズに続いてキーワードとなっている。全体にボリューム感が戻っているのも今シーズンらしいところ。同時に、何人かのデザイナーが自由な精神を強調するようなコメントをコレクションとともに見せている。このあたりの時代を読む目にも注目したい。
大胆な柄重ねたドリームウエア/メアリー・カトランズ
メアリー・カトランズにダイナミックな柄で見せるエキセントリックなパワーが戻ってきた。以前のようなコンセプチュアルなテーマを掲げることなく直球なデザインだが、子供たちが夢見るようなラブストーリーを出発点にしたエモーショナルで、ロマンティックな世界を繰り広げた。カウボーイになりたい少年とお姫様に憧れる少女。それを一着の服の中に詰め込む。
ウエスタンシャツのようなカラフルなヨークをつけたブルゾンに、ダイナミックな星のモチーフをのせたフレアスカート、エレガントに巻くプリントのショールやヘッドスカーフ。大きなチョウを胸に飾ったプリーツスカートのガーリーなワンピースもある。さらには、「ワイルド・アット・ハート」や「ナチュラル・ボーン・キラー」といったアメリカ映画の世界が加わり、タトゥーのような毒気のあるダイナミックな刺繍もキーになっている。柄のキャンバスとしてメンズチェックやシャツ地を多用していることもあり、全体的なイメージは50年代、あるいは80年代のロカビリーのイメージもある。
JWアンダーソンはミニマルな中に部分的な量感を取り入れた、ジョナサンらしいスタイルを見せた。ポイントとなるのがカーブの量感、フレアライン、襟や胸元のパーツのようなアイテム。例えばフレアラインはスカートのヘムをマーメードスカートのように部分的にフレアにしたり、セットアップの裾をジップで3段つなぎにしてフレアにしたり。ダッチサテンのミドリフトップもフレアに広がり、そこに共地のミニスカートを量感のあるカーブの装飾で幾重にも飾る。
パーツアイテムは、襟をジップで留めてフレアに流したネックパーツやシャツの胸元にポケットのように飾るスクエアな布。パステルカラーを軸にした色のコントラストとスタッズやアイレットを重ね付けした装飾とともに、いつもより饒舌(じょうぜつ)にデザインを盛り込んだ。そのクリエーションはやややりすぎのようにも思えるが、そこには「今の物づくりの上では個人的な自由が大切」という考えがあるようだ。ジョナサンらしく時代を読んで、今のクリエーションにまつわる閉塞(へいそく)感に対する自由な精神を強調した。