メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京16年春夏は終了したが、オフスケジュールで発表するブランドのプレゼンテーションが続いた。東京らしい、遊び心のある演出のショーが目を引いた。(五十君花実)
アナーキーなパンクスタイルの「ナインティナインパーセントイズ」(バジョウ)は、ダイナミックな映像でショーがスタートした。スタッズいっぱいのライダーズジャケットやデニムアイテムを、チェーンソーで切り刻んだり、銃で撃ったり、爆破したり、燃やしたりといった光景が流れる。パンクスの服には、そんな「破壊行為」を行った〝風〟の加工アイテムがあるが、それを本当にやってみるというのが今回のテーマだ。
DIYはパンクの精神の一つであり、ある意味、そのエクストリームな表現の形とも言える。Gジャンには弾丸がかすったような跡がつき、細みのパンツは膝がビリビリ。炎の柄のプリントシャツや、スプレーペイント風にハングルや英字を刺繍したセーターもある。初めて登場したレディスは、ライダーズジャケットやモヘアのカラーブロックセーターに、レザーのミニスカート、破れたタイツといったスタイル。靴はスペインの「カンペール」と協業し、編み上げブーツやハイカットのスニーカーを作った。靴袋を覆面マスクのように頭に被せたモデルもいて、この表現に許可を出したカンペールの懐の深さもかっこいい。
「シアタープロダクツ」(武内昭、藤原美和)は、久々にショー形式で発表した。リリースに書かれていたのは「パワフル」「タフ」「たくましさ」といった、従来のイメージにはあまりない言葉だ。
工事現場のカラーコーンが置かれたランウエーにまず現れたのは、筋肉隆々のボディービルダーたち。そこに、ネオプレンのオフショルダードレスやブリーチデニムのパッチワークプルオーバー、ワークエプロン姿のモデルが現れる。ブラウスとストレートスカートのエレガントなスタイルには、電球やプラグなどの無機的な工業製品を刺繍する。胸元を大きくカットしたドレスやインナーウエア風のセットアップがあっても、感じるのは官能性というよりも健康的なセクシーさだ。バッグやバングルに、ダンベルのように「20kg」と刻印されているのも面白い。
「サカヨリ」(坂寄順子)が、前シーズンのショーに続いて今季もプレゼンテーションを行った。会場のギャラリーに現れたモデルが身に着けているのは、ぺプラムディテールのジャケットや、ラッフルをたっぷり重ねたアシンメトリーヘムのスカート、レジメンタルストライプを切り替えたマキシ丈のキャミソールドレス。坂寄らしいパターンのテクニックを生かし、布の動きをポイントにする。
ミリタリーウエアを着想源に、「ミリタリーをいかにエレガントに見せるか」をテーマにした。トレンチコートはバックに量感を持たせたサカヨリならではのフォルム、ラッフルスカートやドレスには、階級章から発想したという幾何学柄を使っている。戦うイメージから、ブラジルの格闘技、カポエイラのパフォーマンスも行った。激しい動きに合わせて、レースのスカートがひらひらと広がる。今季からパリ展も開始しており、「初回から数件の受注が入った」という。
(写真=シアタープロダクツは加茂ヒロユキ。ナインティナインパーセントイズ、サカヨリは各社提供)