17春夏ロンドン・コレ・プレゼン

2016/10/13 06:34 更新


エッジ利かせたナチュラルウエア

 17年春夏ロンドン・コレクションはショーの数が減った一方、プレゼンテーションが増えた。ショーから切り替えたブランドや初参加の新人など注目のプレゼンが多く、全取材ブランドの3分の1を占める。必見の新進ブランドでは、ブランドのシグネチャーを改めて見直す動きが目立った。全体的に天然素材を多用したナチュラルな作風がリードしているが、独自のエッジを利かせてスペシャルな一着に仕上げている。(ロンドン=若月美奈通信員)

 

Palmer//Harding Spring Summer 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only
 「パルマー・ハーディング」は、シャツだけでスタートしたブランドの原点を振り返り、シャツとそれから派生したドレスやコートを揃えた。ほっそりとしたルーズシルエットとアシンメトリーなカッティング、太い赤白ストライプを前面にしたナチュラルかつ都会的なスタイルだ。生地はコットンポプリンとシャンブレーが主役。カフスで遊んだデザインも特徴で、肘の下からフレアに広がるカフス、手首から肘の近くまである太いカフス、ボタンを留める位置で終わるはずのカフスの布が長く伸びて垂れさがるシャツもある。コレクション前夜に首相官邸で行われたオープニングレセプションで、メイ首相が同2人組ブランドとジョン・ルイス百貨店とのコラボレーションラインのシャツを着用して話題を呼んだ。トレンドが自分の方向に向いてきたデザイナーの強みを感じさせるのびのびとしたコレクション。

 

 

Faustine Steinmetz - Spring Summer 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only


 「フォスティンヌ・シュタインメッツ」もブランドの原点であるデニムを前面に出した。といってもデニム地の服というわけではなく、デニムの世界を表現する様々な素材の服。原石のかけらが全面を覆うジーンズ、表面全体にフリンジのように糸が渡るパンツ、ブランド名のモノグラムが織り込まれたコートやパンツ。パンツのモノグラムは膝下から脱色して消えている。色は白とブルーのみで、モデルの顔や会場も青く染める徹底ぶりだ。迫力のテキスタイルは十分見応えあるが、服としての完成度が高まればショーデビューも遠くない。

 

 

Phoebe English Spring Summer 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only


 「フィービー・イングリッシュ」は、弓を弾く女性、喪に伏す女性、あるいは密輸業者といった隠喩的に様々な人の内面性を映し出す7人の女性をアート作品のように並べた。その女性たちが着ている服は全てが歪んでいる。シャツストライプ地を裏使いしてかすれた表情のパンツは左右の幅や長さがわずかに違い、さらに右は縦ストライプだが左はバイヤス使い、水平であるべきウエストラインは斜めになっている。ワンショルダーやラップ風のアシンメトリーなトップに加え、一見シンプルなシャツの襟や袖ぐりも左右が違う。もっとも、全体的にはコットンやシルクのさらりとしたナチュラル素材を前面にぐっとオーガニックになった印象。ジャンプスーツのようなボーイッシュなアイテムも加わった。

 

 

Isa Arfen Spring Summer 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only


 「イサ・アルフェン」も、自然光が差し込む素朴な空間に様々な行動をしている女性たちを並べた。豆をむく人、洗濯物を干す人、読書をする人。マリ共和国の写真家、セイドゥ・ケイタによる50~60年代の女性たちのポートレートやアフリカのボディーペイントなどを発想源に、プリミティブな美しさを表現した世界だ。トライバルなプリント柄を多用し、マント風のコートやワイドなクロップトパンツなどで綴るナチュラルなスタイルに、オーガンディのパフスリーブや左右の色が違うシャツでアクセントを利かせる。上の方だけフロントフックを留めて着るコルセットのようなブラトップもキーアイテムで、様々な色や柄のものがある。

 

 

Edeline Lee Spring Summer 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only


 「エデライン・リー」は、ロンドンの街で見かける様々な場所の写真を背景に、シグネチャーのバブルジャカードのワンピースやセットアップ、チェックのカラーブロックウェアを揃えた。赤、黒、青の2色使いで遠目にはギンガムに見えるそのチェックは細かいスターチェック。EU(欧州連合)離脱決定のニュースを機に、改めて英国を見直してのテーマと生地選びだという。もう一つのシグネチャーである顔のように見えるグラフィカルなモチーフもバリエーション豊富にトップやロングドレスのフロントを飾る。ポロシャツなどスポーティーなアイテムも増え、若々しくカジュアルになった。

 

 

シュウ・ジー


 公式ショー会場に併設された展示会場には、いつにも増してたくさんの中国出身の若手デザイナーが出展している。その中で間違いなく一歩抜きん出ているのが「シュウ・ジー」。今年のLVMHヤングデザイナープライズでセミファイナリストまで残ったロンドン拠点の期待の新人だ。今シーズンは初めてオフスケジュールでプレゼンを見せた。モネの絵画から着想を得た新作は、ギンガムチェックやグレンチェックといった伝統柄の軽い布地を細いテープ状に切り裂き、オーガンディの上にフリンジのように縫い付けたテキスタイルが主役。切り裂いた布テープの装飾は共布の上にものせられ、黄色いギンガムチェックのシャツの胸まわりには三つ編みしたテープがシャーリングを施したかのように帯状に飾られている。ワイドレッグのパンツの裾にも同じ装飾。光沢のあるフリンジドレスは、細い糸を束ねて三つ編みしたロープのようなひもでぎっしりと表面が覆われ、そのひもの先から垂れるフリンジがしなやかに揺れる。手作業で生み出す独自のテキスタイルはそのままにこれまでよりぐっと軽くなった。

 

 

Mm6 Maison Margiela Spring Summer 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only


 1年ぶり、2回目のロンドンでの新作発表となった「MM6メゾン・マルジェラ」も今回はプレゼンで新作を見せた。テーマは「ハグ&キス」。2人が抱き合う姿はそれぞれの背中が見える。そこで前後ともにバックスタイルのトップや前後両方にポケットがついたデニムスカートがキーアイテムになっている。前後違う色や長さの布を貼り付けたデザインも多い。17年はMM6の20周年ということもあり、アーカイブから三角形のパネルを合わせて立体感を出したレザージャケットも再登場。迷彩柄も多用しているが、折り畳んだ状態で柄をのせたものを、トースターで温めて染料を溶かして広げると、自分だけの一着ができるTシャツもある。新作はモデルではなくマネキンが着用。壁面には100個のデニム製のバッグが旗のように飾られ、アーティストが自在にペイントするパフォーマンスが行われた。バッグは終了後間もなく店頭に並んだ。

(写真=シュウ・ジーを除きcatwalking.com)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事