クリエイティビティーとリアリティーが問われる
【ミラノ=小笠原拓郎】17年春夏ミラノ・メンズコレクションは新人が数組デビューしたものの、かつてにくらべて大きく発信力を失っている。ショーのシステムの見直しを迫られるブランド側は「SEE NOW, BUY NOW」の考え方とともに、レディスとメンズを統一してショーをするという考えも出てきている。これにより、来期以降のミラノ・メンズがさらに縮小する可能性がある。こうした流れを払拭(ふっしょく)する新しいムーブメント、デザインを出せるかどうかに、ミラノの将来がかかっている。クリエイティビティーとミラノらしいリアリティーのあるデザインに期待がかかる。
MSGMは軽快なカジュアルスタイルの中に、春夏のトレンドをしっかりと加えている。クロップト丈のボーダーセーターをレイヤードした着こなしがそうだ。マーブル模様のプリントトップやトラックスーツなどプリントで遊ぶ。ファイアパターンをトップやハーフパンツに描き、宇宙や雲を思わせる抽象的な柄をコートにのせる。アーガイル柄がいびつにゆがんだセーターも面白い。柄とトップのボリュームで遊びながら、パンツラインはすっきりとシンプルでリアルなスタイルに仕上がった。
フェンディのショー会場に入ると、細長いプールに沿ってランウェーが作られている。そこに登場するのは、軽やかでリラックスした気分のスタイル。細かなチェックのスーツやセットアップにVネックニットをコーディネート。バスローブのようなアイテムや胸元ボーダー切り替えのポロニットなど快適なアイテムが揃う。春夏のアイコンともいえるのが、手描きのようなよろけたストライプ柄。ブラウン×ブルー、イエロー×ブルーなどで、この柄をブルゾンやパンツ、コートにのせた。リュックサックにも、同じストライプとアップリケを飾った。
エトロはソングライターやタトゥアーティスト、ボヘミアン、法律家などさまざまなモデルをキャスティングして、楽しさいっぱいのショーをした。キーとなったのはイカット柄。ブルーを軸にしたイカット柄が素朴でリラックスした雰囲気を醸し出す。全体にゆったりとしたシルエットも特徴。インディゴデニムなどのきものジャケットにルーズフィットのパンツを組み合わせた。
ジョルジオ・アルマーニが軽やかな大人のエレガンスを見せた。オフホワイトからベージュに掛けての淡い色のスーツやジャケットからスタートしたショーは、いつもよりもノンシャランな気分。軽やかなリネンやニットのジャケットは、小さな肩でホールドしてドレープを流すか、コンパクトなまますっきりと見せるか。そこに股上がやや長めのリラックスしたパンツをコーディネートする。ショーの後半はグレーからくすんだブルー系の色合わせ。ダブルブレストのスーツも、パンツラインがいつもよりテーパードしていて量感で遊んでいる。
ヴィヴィアン・ウエストウッドは今の時代の男性像をどうとらえているのだろうか。ショーの冒頭はフロントとバックで生地を切り替えたパンツが登場。ジャージーをアシンメトリーに流したワンピースといったアイテムでジェンダーレスの創始者としてのプライドも見せる。しかし、ウエストウッドの持っていた、時代や社会性に対するウィットに富んだ新しいアプローチはこのところすっかりと影を潜めている。スカートもワンピースも男性のモードにとって普通になってしまった今、デザイナーは何を語るべきなのか。ウエストウッドの後任ともいえるアンドレアス・クロンターラーはそのあたりをどう考えているのかが気にかかる。(写真=catwalking.com)