【パリ=小笠原拓郎、青木規子】17年春夏パリ・コレクションの初日は、いつも以上に多くの若手ブランドが揃った。勢いのあるショーも多く、コシェは多くの一般客が集まる巨大な公共施設で、Yプロジェクトは若いファンを多く招いて会場を沸かせた。これまでとは違う新しいアプローチでファッションを盛り上げている。
大人っぽく官能的に変身…サンローラン
サンローランが大人っぽく官能的に変身した。新クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロが見せたのは、ワンショルダーやアシンメトリーのディテールを取り入れたミニスタイル。いかにもヴァカレロらしいラインだが、彼自身のコレクションと比べると、サンローランらしい上品なエレガンスを感じ取ることができる。
大きく胸元を開けてデコルテを強調したレザーのミニドレスやレザートップといったアイテムに続いて、マスキュリンなフォーマルジャケットから派生するドレスやコンビネゾンを見せる。ブラックフォーマルとオーガンディのコントラストやパンツルックは、66年のタキシード・ルックとは違うヴァカレロのフォーマルのフェミニンな表現だ。ショーの後半はワンショルダーのビュスティエトップやワンショルダーのドレスといったライン。ショルダーは構築的に膨らんで迫力のあるフォルムを作り出す。アシンメトリーのオフショルダーで見せるレパードドレスでフィナーレ。
コシェは今シーズンも、公共スペースを使ったストリートクチュールを見せた。会場となったのは、レアールのショッピングモール。フェザーやレースを飾ったストリートスタイルが次々と登場する。素人を含む個性的なモデルがモール内をぐるぐると回り、一般客たちはいったい何事かと驚き、立ち止まる。トラックパンツと合わせるのはレースを重ねたプルオーバーやフェザー刺繍のコート、キャミソールドレスはレースを重ねたフレアパンツと合わせて着る。
ステッチワークの利いたマスキュリンなパンツに、袖にボリュームをとったジャージーブルゾンやパイソンのタブリエといったアイテムで軽やかに遊ぶ。ドレスはストライプとレースのパッチワークやビジュー刺繍とレースの装飾。しかし、それも街のリアルスタイルへと作り変えてしまう。素材やテクニックにこだわりながらもリアルなストリートの見え方に。それがクリステル・コシェの今の時代のとらえ方だ。
アンリアレイジは白と黒に絞ったコレクション。ストライプと紋章柄を重ねたセットアップやドレス、ケープのようなスクエアディテールのレザートップやパッチワークトップ。今シーズンのテクノロジーは、特別なアプリを使うとドレスの黒い生地に柄や文字が浮かび上がり音が流れるというもの。モノクロでプリントされた森や花の柄のドレスは、部分的に黒い生地が被せられている。
しかしアプリを通じて見る服は、同じ柄のワンピースに見え、海のさざ波などの音が聞こえてくる。テクノロジーとの付き合い方では、独自のスタイルを持つアンリアレイジ。だが、その技術を生かそうとするあまり、フォルムを犠牲にしてしまっているようにも思える。
(写真=大原広和)