【パリ=小笠原拓郎、青木規子】17年春夏パリ・コレクションは、柔らかなドレープを描くジャージーアイテムが充実した。シフォンのようなジャージーやスパンデックス入りの素材を使って、ギャザーを寄せてドレープを作る。エレガントでありながら快適な着心地。ハッピーで活動的に過ごせるジャージースタイルが一気にトレンドの中心に躍り出た。
フェミニンなジャージースタイル…ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトンは、ヴァンドーム広場の一角に建設中の新しい店舗のスケルトンの空間を使ってコレクションを見せた。これまでのフューチャーリスティックなガーリースタイルを一新して、しっとりとした大人の要素を取り入れたフェミニンなイメージをアピールした。ウエストベルトで絞ってギャザーを作ったジャージードレスやウエストをカットアウトしたジャージードレスなど、柔らかなジャージーを生かしたドレープラインがメインとなる。
ドレスにのせる透け感のある黒と白のチェックやドット柄は、どこかダミエやモノグラムの柄を思い出させるもの。新鮮なのはグレーのテーラードスーツを取り入れたスタイル。大きな量感をウエストタブでアジャストさせたり、袖のシームを縫わずにケープのようなショルダーラインを作ったりと、シックなジャケットスタイルを軽やかに見せる。
オンブレチェックのノースリーブシャツやグラフィカルなTシャツと箔(はく)レザーのバイカージャケットなどで、グランジのムードを取り入れる。ショーの後半は、チュール刺繍にブラトップのディテールやアシンメトリーなスカートのパーツを重ねたドレス。パリのエッセンスを凝縮して、そこで輝くさまざまな女性像からイメージしたコレクション。
レトロなスイミングイメージ…ミュウミュウ
ミュウミュウはレトロな柄と配色をベースにして、スイムウェアの要素を取り入れた。トレンチコートにブラトップを重ね、スーツやコートに斜めのパッチポケットやパイピングのディテールを入れる。ストライプや60年代イメージのグラフィカルな花柄は懐かしい気分。そんなレトロな柄を象眼のファーコートや膝丈ドレスにのせていく。スイムキャップのような花飾りのヘッドピースとともに、ブルマのようなパンツとブラトップのスタイルも登場。タオルケットのような柄のジャケットを重ねて軽やかに見せた。
ケンゾーは、自由なムードが漂うディスコティックなコレクションを作った。高田賢三が77年に伝説のクラブ「スタジオ54」で開催したショーを背景に、当時のパリを代表するアイコニックな存在だったフォトグラファーのアントニオ・ロペスの作品をフィーチャーした。キーアイテムは、ビッグシルエットのシャツ。それに量感のあるハイウエストパンツやタイトなミニスカートを組み合わせたシンプルなスタイリングが多い。そこにパンチを利かせているのは、メタリックカラーのテクニカルタフタや真っ赤なビニルといった光沢素材。ドローストリングで細かくギャザーを寄せたレインコートやポンチョドレスが体を軽やかに包み込む。Tシャツやドレスには、ロペスが撮影したポラロイド写真や彼のスケッチがプリントされている。
ポール&ジョーは、まるでコシェのように変身した。セーヌ川沿いの屋外のショーで見せるのは、爽やかな装飾を付けたラフなストリートスタイル。ビッグシャツやTシャツに、腰を落としてはくワイドパンツやスポーティーなフラットサンダル。カジュアルで若々しいスタイルを、白やサックスブルーで軽やかに染めた。チノクロスのサファリジャケットとパンツのセットアップには白い花のスパンコール飾り、エプロンドレスは淡いバラ柄とストライプをミックスするなど、フェミニンな要素を甘さ控えめに差している。Tシャツとキャミソールのレイヤードも多い。
モンクレール・ガム・ルージュは、砂を敷き詰めたランウェーで、これまでになくシンプルなコレクションを見せた。エッセンスになっているのは、クラシカルなミリタリーの要素。ドレスコートやミニドレスは、体のラインにぴったりと沿う構築的なシルエットで、軍服のガンパッチ風の切り替えで肩のラインを飾る。キーカラーはトリコロール。白シャツの裾や前立てをトリコロールテープでトリミングし、パーカやブルゾンの全身を3色に切り替えた。(写真=大原広和)