"透明感ある布、プリーツやギャザーのドレープ"
【パリ=小笠原拓郎、青木規子】16年春夏パリ・コレクションに、ミラノに続いて透明感のある布を重ねたスタイルが広がっている。プリーツやギャザーなどでドレープを作り、そこにチュールやオーガンディを重ねるといった手法が多い。さまざまな柄をミックスしていくスタイルも広がっている。
生き生きとした弦楽四重奏の生演奏にのって、ドリス・ヴァン・ノッテン(写真下)が得意のミックス感覚を生かしたコレクションを見せた。
ジャカードにブロケード、刺繍といった立体的な装飾に、艶やかなサテンとチュールの透け感を重ねて陰影を作る。パープルにイエロー、ピンクにブルー、原色のビビッドカラーにくすんだグレーやベージュを合わせ調和させていく。
描かれるのは、炎のモチーフや曲線的なモホークヘア(モヒカン)のモチーフ柄だ。アイテムの組み合わせも豊富で、膝下丈のタイトスカートにワイドパンツ、ショートパンツにコートなど。そこにマスキュリンなテーラーリングとフェミニンなブラトップで振れ幅を作る。
スカートのウエストには大きなボウ飾り。ドレスのヘムにはフリルを飾って布の動きを入れていく。ショルダーから斜めに流れるラッフルや直線的なフリルテープのディテールもアクセント。新鮮さという点ではそれほどでもないが、いかにもドリスらしいセンスの良いミックス感で見せた。
メゾン・マルジェラ(写真上・左)はショートジャケットにミドル丈のスカートを合わせたクラシックスタイルがベースとなった。
ジャケットにはボンディングやネオプレンのような膨らみのある素材が多く、短い丈のトップに対してペグトップパンツや膝下丈のタイトスカートでバランスを作る。
ビジュー刺繍にジャカード、箔のはがれたような柄、割れたガラスの刺繍など、立体的な装飾の中にマルジェラらしいカスタマイズドの要素を取り入れる。
ドレスやコートには汚れたようなアブストラクトな柄。袖を切りっぱなしにしたチルデンセーターはヘムに透明な布をかぶせてそのままドレスに仕立てる。
コレクションに彩りを添えるのはリーゼントの男性モデル。着ているのはスリップドレスのようなアイテムにパンツを組み合わせ、ジャケットを重ねたスタイル。ジェンダーレスの気分も垣間見える。
アーティスティックディレクターのアルノー・ヴァイヤンとセバスチャン・メイヤーによる新生クレージュ(写真上・右)がスタートした。
ブランドを象徴するアイテム15点を、15の色と素材を使って現代によみがえらせるという趣向のコレクション。ジップアップブルゾンやトラペーズドレス、丸いパーツを前後で組み合わせたミニスカートなど、単品アイテムごとにバリエーションが揃った。
見覚えのあるレトロなアイテムだが、アクアとネービーの組み合わせや、原色をアクセントにしたカラーコントラストが若々しい。
ディレクターの2人は「コペルニ」を手掛けてきた若手デザイナーの有力株。クレージュ就任を機にブランドを休止し、ファイナリストにノミネートされていた15年のLVMHプライズを辞退している。(写真:大原広和)