サステイナビリティー(持続可能性)、心地よい暮らし、安心・安全――昨今の消費マインドの変化で、素材への関心はますます高まっている。「リサイクル素材で自然環境に貢献する」「家で洗えてしわになりにくい機能素材」というように、ブランドの表現手段や売り場でのアピールに、素材が果たす役割は大きくなっている。素材の知識は、購買を後押しする強力な助けになるはず。
繊研新聞では2月から5月にかけ、20年春夏の店頭で生かせる素材解説を掲載してきた。今回はひと足早く、20~21年秋冬の有力素材をチェック。「20~21年秋冬トレンドチェック」発注編の素材ランキングで、2位を大きく引き離して首位に立った「ニット」を見ていこう。
(橋口侑佳)
体を優しく包む糸の輪
20~21年秋冬は、プルオーバーから羽織物、ドレス、アウター、ボトムまで、ニット仕立てのアイテムが増えそうだ。とりわけ前年の秋冬は厚手のコートが振るわなかったこともあり、軽く羽織れるニットのライトアウターがさらに広がる気配だ。デザイナーコレクションでは、ニットドレスが注目を集めた。体のラインに沿う柔らかい風合いが、今シーズンの女性らしく艶やかなスタイルに欠かせない。アパレルの展示会では、セットアップの提案も活発だ。
ニットは、巣ごもり生活で強まった「快適に過ごしたい」気分も後押しし、21年春夏も人気が継続すると見られている。快適な着心地につながる伸縮性や柔らかさを備える素材だからだ。縦と横に糸を交差して作る織物に対し、ニットは1本の糸で輪っか(ループ)を連続させる。このループの膨らみや丸みによって縦、横に伸び空気を含んでソフトな特徴が生まれる。
Tシャツもニットの仲間
ニットは、ループの連ね方によって、横編み、丸編み、経編みの三つに大別される。セーターやカーディガンなど一般的にイメージされるニット製品は、主に横編みで作られる。1本の糸を横方向に往復し、編み立てていく。身頃や袖などのパーツごとに編み、縫製して製品にするのが主流だ。なお、近年増えている「ホールガーメント」も横編み製品の一つ。編み機上で袖や襟などのパーツを成型編みしながら、自動でかがるため、無縫製でニット製品ができる。縫い目がないため、ごわつかず、ニット本来の伸縮性を最大限に生かすことができる。
丸編みは、円筒状に編み針が並んだ機械を使う。ジャージー、メリヤスとも呼ばれる。らせん状にループをつなげ、筒状に編み上がるため、切り開いて1枚の生地にする。パーツごとに編むのが基本の横編みに対し、丸編みは織物のようにパターンをはめて裁断(cut)し、ミシンで縫製(sewn)して製品にする。カットソー(cut&sewn)はたいてい、丸編みの製品だ。
縦方向にループをつなげるのが「経編み」。横編みや丸編みに比べ伸縮性が低い分、ハリ・コシがあり、構築的なシルエットも表現しやすい。用途はランジェリーが多い。
製品で横編みか丸編みか知りたい場合は、袖や裾の仕様を見るといい。丸編みの場合は、カットしたところからほつれるため、縫い代が必要で、織物と同様に返し縫いなどで始末している。
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