5年間の会社員時代と8年間の自営業(阿賀岡恵)

2014/05/12 00:00 更新


今はAYAME SOCKSを生業に毎日愉快に過ごしている私ですが、靴下デザイナーとして独立するにあたり、かけがえのない経験となった会社員時代があります。桑沢デザイン研究所を卒業し、たまたま決まった就職先は、靴下やホゼリーのメーカーでは最大手の福助という会社でした。今のAYAMEを考えた時に感謝すべき事は沢山ありますが、やはりこの勤め人時代は、間違いなくAYAMEの礎になっています。

つい最近、ひょんな事がきっかけで10年ぶりに古巣を訪れました。昔の上司や同僚に会って、当時の自分を振り返り、何だか懐かしかったです。お前は全然変わってないなー、なんて言われてちょっと嬉しくもあり、恥ずかしくもありました。

私が在籍していた2001年~2005年頃、福助はちょうど激動期で、私も商品本部のサラリーマンデザイナーとして、旧福助2年半、民事再生、新福助2年半と、なかなか中身の濃い5年間を送りました。

今はどうなのか分からないですけど、旧福助の時って、部課長はもちろん、若いMDですら当たり前のように靴下の構造に関する知識をちゃんと頭の中に備えていて、新人デザイナーは、先ず初めにそういった靴下の基礎知識を教えてもらえました。機械のこと、糸のこと、どのぐらいの量の柄を盛り込んだら品質上まずいか、どのくらいの力で引っ張って何センチ伸びが出れば基準の履き心地を保てるか、等。

会社っていいですよね。年長者がいて色々なことを教えてもらえます。失敗しても注意してもらえるし、先輩や上司がフォローしてくれます。20代の若いうちは与えてもらう事ばかりですし、後輩の面倒を見ることだって自分自身がすごく成長できる事ですよね。

お勤めなさっている方々は、日常的にそういう環境にあるので、時々、会社生活をしている人っていいなー、なんて思ったりします。それに、教えを乞うことは、自分の心がけ次第でいくつになってもできる事だと思うのですが、年齢が上がってくると「怒ってもらう」っていう機会が減ってきます。特に独立して一人でやっていると。

独立してからは、当たり前ですけど、自分の会社で、全てのことの責任者が自分です。私は、お山の大将の暮らしになってから8年程経つので(会社員だった頃の大変な事や都合の悪い事は全部忘れて)、時々、会社員の人を羨ましく思います。

え? そんな自由に暮らしてそうなのに?って、お思いになるかもしれませんが、自営で一人でやってると、主観と客観が乖離しがちというか、考えが偏りがちになるというか、(私の場合は)気を付けてないと視野が狭くなりがちです。

会社にいると色んな年代の人と密接に関われるし、なんか、社内って色んな人がいっぱいいて楽しいですよね! 席替えとか、会議がどうのとか、今の私には無い世界です。何って、アレがいいですよ、会社帰りにエレベーターで一緒になった人と「ちょっと一杯行きますか?」みたいなの笑。歓送迎会とか忘年会とか、当時は若かったから「めんどくせー」とか思っていたのかもしれないけど、今となっては恋しいぐらいです。

とりとめのない文章になってしまいましたが、何が言いたいのかというと、いつか自分で独立しようと思っている若い人も、まずはお勤めしてみてはいかがでしょうか、という事です。色々な人に囲まれて日々働いて、そしたら自分の事が少し分かってくると思います。

学校卒業していきなり独立ってのも果敢ですごいなあって尊敬しますけど、会社に勤めてみて、やりたい仕事もやりたくない仕事も色々やってみてからでも遅くないと思います。己を知れば、今後の百戦も危うからず、ですよ。人生イージーに考えたら独立するのはいつでも出来ますしね。

そんな事を思ったGW明けの昼下がりでした。

以上!

 

 
奈良の工場にて。左:AYAMEソックモンキーと干支の福助人形。右:AYAME生産中



気鋭の靴下ブランドAyame’の活動記録。現在年2回、東京、パリ、ニューヨーク、ロンドンにてコレクションを発表、Made in Japanの靴下を世界に発信中 あがおか・あや/Ayame’socksデザイナー/桑沢デザイン研究所卒/2007年Ayame’設立



この記事に関連する記事