アマゾン・ファッション・ウィーク東京17年春夏が17日に開幕した。有力ブランドが海外に発表の場を移し、ややパワーダウンしたといわれている今シーズンだが、実力派ブランドがしっかりと骨太なショーを見せている。今後が楽しみなブランドも複数ある。(五十君花実)
流れる布のエレガンス…ウジョー
前シーズン、アルマーニの若手支援枠でミラノでショーをしたウジョー(西崎暢)が、今シーズンは東京で見応えのあるショーをした。たっぷりとした量感のバランスと、流れるような布の動きで見せる44体だ。
アイテム一点一点はリアルクローズで、スポーツやユーティリティーウェア由来のベーシックも多い。ただ、独特のパターンテクニックによって布に動きが生まれ、ベーシックなものもスペシャルに、カジュアルアイテムもエレガントに見せる。
サテンのドレープトップにはワンショルダーサスペンダーのワイドパンツを組み合わせ、フロントとバックで素材を切り替えたノースリーブドレスは、深く割ったサイドからワイドパンツが流れ出す。バックにパネル状に布を重ねたキュロットパンツ、タートルネックセーターの一部のようなニットパーツも、歩くたびに揺れて軽さが出る。
きものスリーブ風のノーカラーコートやテーラードジャケットとも、深いサイドスリットが風をはらんで重くならない。スクエアに布を切り替えてアシンメトリーに流すバランスや、まだ製作途中のような〝DIY〟に通じる感覚は、今シーズンのトレンドにもきっちりはまっている。端正で、実際に手に取りたいと思うアイテムがいっぱい。更に踏み込んだ挑戦も見てみたい。
シアタープロダクツ(武内昭、藤原美和)のテーマは、〝宝の山〟を意味する「ゴールドマイン」。ゴミや浜辺の漂着物などを集めて、自分流に着飾って楽しんでしまおうというマインドを感じさせる内容だ。中東なのかアフリカなのか、全体的にどこかエスニックな香りが漂う。アフリカの民族衣装に使われるカンガ風の生地のセットアップやコートは、よく見ると柄のモチーフが潰れたペットボトルなどのトラッシュだ。タイダイ模様にマルチボーダー、奄美の泥染めといった色柄をミックスし、ブランドらしいレトロなムードのウェアに載せる。アクセサリーは、化粧品の空き箱を連ねたネックレスや資材ロープで作ったピアスなど。レトロでガーリーな感覚が元々の持ち味だが、16年春夏や16~17年秋冬は、タフな女性像や、ややアバンギャルドな表現を探っていた。今季は持ち味の可愛らしさに戻って、シーズンの気分やトレンドもうまくミックスしている。「これぞシアター」という安心感があって、顧客人気も高そうだ。
11年にスタートしたウエムロムネノリ(上榁むねのり)が、初めて小規模なプレゼンテーションを行った。シャツやモッズコートといったベーシックウェアを、軽やかに女性らしくこなしたエレガンスを揃える。テントラインのブルゾンやコートは、白いシフォンやネイビーのからみ織りからオレンジや黄色のライナーが透け、プリーツスカートやドレスはサイドスリットで布が揺れる。上榁は伊「ジル・サンダー」のデザインチームで働いていた経験もあって、技術は折り紙付き。それを生かして得意のシャツやベーシックウェアのアレンジから表現の幅が広がっていくと、更にステップアップしそうな予感。
デビューショーのアクオド・バイ・チャヌ(チャヌ)は、ジップのディテールをポイントにしたストリートスタイル。ヒップホップダンスのショーケースに続いて登場したモデルは、シャツやシャツディテールのブルゾン、オーガンディのMA‐1をレイヤードし、スキニーパンツと合わせる。ラッパーが付けるような大ぶりネックレスを透明なプラスチックチェーンで作ったり、黒い大きなジップをマスク代わりに使って口裂け風に見せたりといった、トリッキーなアクセサリーもポイント。デザイナーは韓国出身で、東京モード学園に在学している。新人のデビューショーとして十分満足できる内容だ。今後は、アイデアの引き出しがどこまで広がるかに注目。
香港貿易発展局が支援する合同ショー「ファッションホンコン」は、16年春夏に続く2回目の開催。イブニングドレスを含むチャイリー・ホ―、クリーンなリアルクローズのハウス・オブ・ヴィー、ストリート感覚のルームループと、香港ファッションの幅の広さを感じさせるラインアップだ。なかでもルームループ(ポリー・ホ―)は、今季のトレンドである明るく元気な女性像にマッチしている。60年代調の幾何学柄プリントで作るサロペットやワイドパンツに、ピアスの飾りのような丸いプラスチックパーツをたくさん飾ったトップやスカート。そこにキャップを合わせて、ストリートのムードをプラスする。(写真=加茂ヒロユキ、ルームループは大原広和)