ハンドメイドショップ「あにあーる」(名古屋市)の店内に一歩入ると、パステルカラーに包まれる。幻想的なモチーフ、メルヘンチックな商品が並び、ファンシーな空間でインパクト大だ。この〝ゆめかわいい〟世界を作り上げているのは、「黒禁止」など独自のルール。同じ系統でまとまったハンドメイドショップは「珍しい」として、国内外から客が訪れている。
(小坂麻里子)
作家100人の一点物
作家のハンドメイド商品を委託販売するほか、オリジナルデザインのリボンや生地、中国から仕入れたビーズ、パーツなどを揃える。オープン時40人ほどだった作家は100人ほどに増えた。オリジナルのバッグ、ポーチ、クッションなど一点物で構成する。
価格はリボンなどのパーツ約100円から、作家の商品が数千円まで幅広い。今年1番バズった商品はぬいぐるみを入れて持ち歩けるバッグ。推し活向けによく売れた。
客層は東京、大阪など遠方のほか、外国人も多い。韓国、台湾、中国、アメリカ、インドネシアからの問い合わせもあるという。ほとんどの人がSNSを見て知るそうだ。メイン層は20~30代。地下アイドル、コンセプトカフェで働く女性だけでなく、可愛い物が好きな大人女性が訪れる。推しへのプレゼントとして買う人もいる。
「興味はあるが、お店に入る勇気はない人」には、店外にぬいぐるみの自動販売機が設置されている。自販機ももちろん「黒NG」のオリジナルデザイン。SNS映えもするが、人の目を気にせずに買えるため夜間によく売れるという。
熱烈なファンが支え
あにあーるを運営するリナさん自身、ぬいぐるみを作るハンドメイド作家だ。14年頃からミシンや手縫いでぬいぐるみを制作している。クリエイターズマーケットに出店しながら、雑貨店で働いていた。最初は作家として知名度がなかったが、少しずつファンが増えた。
18年6月に出展したイベントが好調で自信につながった。「自分のお店を持ちたい」と思うようになり、9月から資金集めと物件探し、作家への声かけなどを一気に開始。翌年1月にオープンした。インスタグラムとX(旧ツイッター)でオープンを知らせると、その投稿が拡散し、次の日には多くの人が来店した。「スタートダッシュはすごかった」と振り返るが、1年後にコロナ下へ。来店が難しい中でも熱烈なファンによる売り上げで乗り越えられたという。
最近、リナさんのオリジナルキャラクターのライセンス契約が決まった。来年に関東でお披露目のポップアップイベントを予定している。「来年が楽しみ。イベントであにあーるをより知ってもらう機会になるとうれしい」と笑顔で話す。