セレクトショップの一角に並ぶアイウェア「BLANC」(ブラン)。デザイナーの渡辺利幸さんは、12年にブランドを立ち上げ、福井県・鯖江産地の職人と物作りしながら現代のワードローブに溶け込むサングラスと眼鏡を提案してきた。気軽にアクセサリー感覚で楽しむアイウェアを根付かせた一人でもある。
(須田渉美)
前職は13年以上、セレクトショップの店長としてバイングや接客に携わっていた渡辺さん。当時扱っていたサングラスは「欧州ブランドがほとんど。5万円ぐらいして、日本人には心地良くフィットしない。購入する人が気にするのはファッション性だけで、接客しても『格好いいですね』しか言えず、語彙(ごい)力がなくなるのが嫌だった」ことが原点にある。ある時、鯖江の職人にフィット感を調整してもらったことが縁で、日本製のアイウェアのビジネスに踏み込んだ。

欧州と国産の良さ
目指したのは「欧州のファッションのセンスが備わって国産の眼鏡の掛け心地」という隙間のプロダクト。渡辺さんは90年代に「クリストフ・ルメール」「ジョー・ケイスリー・ヘイフォード」といったモードブランドから裏原宿のストリートブランドまでたくさんのファッションカルチャーに触れた経験がある。それなのに、インポートブランドを除くと、当時は眼鏡専門店で扱うクラシックな日本製のライセンスブランドしかなかった。自身は「図面を描くことはできなかったが、工場の担当者にこういう雰囲気を出したい」と説明し、最初にサングラスを形にした。日本人にとって「サングラス=怖い人のイメージがあったし、スタイルを問わずに洋服になじみ、着用するハードルが下がるように」考え、柔らかな色味の透けるレンズも採用した。
売り先は最初からセレクトショップを対象にして展示会を行った。「靴もバッグも、専門店で買う時代から、セレクトショップの品揃えに移行していたし、アイウェアを置いてもいいんじゃないか」と。結果、抜け感のある印象が目を引いて、違和感なく着用できること、当初は2万円台で製品化できたことを強みに、アクセサリーの一つとして着実に売れていった。現状の取引先は50件ほどになる。

ニュートラルで
今も変わらず、企画の最初に思い浮かべるのは「セレクトショップの一角に置かれている姿」だ。程よくベーシックさも備えたフォルム、服のコーディネートを念頭に入れた色に〝らしさ〟を出す。フレームにはトープやクリアグレーといった中間色をよく使う。心掛けるのは「ニュートラル」であること。「アイウェアだけで完結するのではなく、身に着けてスタイリング全体でいいねと言われる存在でありたい」
今年から、コロナ禍で中断せざるを得なかった海外販路の開拓にも、改めて取り組む。「欧米のファッションブランドに比べると、おとなしいって見えるかもしれないが、そういうデザインに需要があること、需要の裾野が広いことを強みにしていきたい」と考える。
