《異業種に学ぶ》カフェヨシノ、ドライブスルーでモーニング コスパとタイパを求める層へ

2025/08/22 06:25 更新NEW!


ドライブスルーは注文から3分で提供

 名古屋やその近郊の喫茶店では朝、ドリンクをオーダーすると、追加料金なしでトーストやゆで卵が付いてくる。全国的にも有名な名古屋のモーニングサービスだ。近隣の住人たちが喫茶店に集まり、朝食をとりながら、店でゆっくりくつろぐ。だが、そんな喫茶店モーニングの光景が変わろうとしている。モーニングの新しいスタイルを仕掛けたのは名古屋に本拠を置く喫茶店チェーン、カフェヨシノ。ドライブスルーでモーニングサービスの提供を始めた。もはや客は入店することなく、車の中で飲み物とトーストをいただく。コロナ禍を経て、車は単なる移動手段ではなく、快適な居住空間と認識されるようになった。自分だけの空間で自分だけの時間を過ごすことの快適さ。快適さを求める新しいライフスタイルに、既存のサービスを結び付けることで、新たなマーケットを開拓している。

(神原勉)

新たな集客手段として

 カフェヨシノがドライブスルー併設の中島店(名古屋市中川区)をオープンしたのは23年11月。ドライブスルーは同社では初めての試みだ。コロナが明けても来店頻度がなかなか回復しない中、新しい集客手段としての挑戦だった。ノウハウも整備されたマニュアルもなかったが、ふたを開けてみれば、店の売り上げの2割をドライブスルーで稼ぐほどの人気ぶり。店内だけでなく、ドライブスルーでもモーニングサービスが付いてくることが話題を呼び、10%増のペースで伸び続けている。

カフェヨシノ中島店

 「ジレンマもあった」とカフェヨシノの吉野貴士社長は振り返る。居心地の良い快適な空間でおいしい飲食を提供し、喫茶店としての価値を感じてもらってきた。その価値を磨き続け、自家焙煎(ばいせん)のコーヒーをはじめ、ドリンク、フードは手作りにこだわり、店内はスタイリッシュだが落ち着いた空間を追求してきた。ドライブスルーでは、味は届けることはできても、店内の雰囲気は提供できない。「満足してもらえるのか」と、悩んだ。

吉野貴士社長

 それでも客は支持してくれた。コロナ禍を経て、快適な空間の解釈が変わった。家の中や車の中、プライベートな空間で過ごすことの快適さが見直され、自分の空間で好きなことを楽しみたい、そこにおいしい飲み物があれば、喫茶店でなくてもいい。そういう認識が広がっている。

本格的な味を手軽に

 カフェヨシノでは、店内で飲むと480円のコーヒー(レギュラーブレンド)が、ドライブスルーでは350円。しかもモーニングの時間帯はこれにトーストが付いてくる。平日は車通勤のビジネスマン、土日はお出かけ前のファミリーが利用する。コンビニのコーヒーは値上がりしたものの100円台半ばだが、サンドイッチやパンを併せて買えば300円を超える。コンビニとほぼ同等の値段、しかも喫茶店の本格的な味、しかも車を降りなくていい。コスパとタイパ(時間効率)を求める層をコンビニから引き寄せた。

コーヒー代350円だけでトーストが

 その一方で、店内飲食の客数は落ちていない。喫茶店の居住性を楽しみたい既存の顧客と、タイパ重視の新しい顧客とのすみ分けは明確だ。ドライブスルーによって、新しい顧客と需要を生み出した。現在、ドライブスルーを導入しているのは中島店のみだが、今後、標準装備として既存店や新店にも広げていく。

■カフェヨシノ

 名古屋市を中心に愛知県で17店の喫茶店を運営する。実はドリンクを頼めばフードが無料で付く「ゼロ円サービス」は、モーニング(開店~午前11時)だけでなく、ランチ(午後2時まで、もちもち生こっぺサンド)、アフタヌーン(午後5時まで、シフォンケーキなどのスイーツ)、ファイナル(閉店まで、ミニカレーかクリームぜんざい)と、開店から閉店まで全時間帯に拡大(現在4店での実施)している。モーニングに集客が偏らず、ほぼ全ての時間帯でまんべんなく席が埋まるようになった。ゼロ円サービス、ドライブスルーのノウハウ、インフラを活用し、FC展開にも力を入れ、同業、異業種を問わずFCオーナーを募集している。

実は閉店まで「ゼロ円」サービス(ファイナルサービスメニュー)


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