「衣服とは概念」である。衣服を実用物と捉えるのではなく、人が豊かに生きるための「概念」であると捉えることが、新時代を生き抜くための「事物」を誕生させ、自身の考えをひらき、アパレル産業をひろげる。従来の社会システムや、多様な領域との新たな価値創造、本業転換の可能性を「ひらく」ための、キーワードである。
(衣服造形家、繊維文化研究家 眞田岳彦)
AI(人工知能)や情報通信の急速な発展など大きな生存環境変化の中を、「裸体」では生きられなくなった私たちは、どのように価値を創造し、培った生業を変化させながら「心、豊か」に生きればよいのか。私は、数万年の過酷な環境変化の中、人類が生き抜くために発現させ、心身の豊かさを得てきた衣服にこそ、その問題を解くカギがあると考えている。そのキーワードが「衣服とは概念」であり、多様な記号性から形成された概念=衣服であるという捉え方である。
「概念」の集積
人類の裸体化は200万~180万年前に登場したホモ・エレクトゥスに始まるとされ、120万年前までには体毛の多くを失い裸体化したという仮説が提示されている。通常であれば体の表層が大きく変化し、生息環境に適応できなくなった生物は淘汰(とうた)されることが想像されるが、人類は多くの体毛を失いながらも絶滅しなかった。それは、この世界に生きる人類以外の生物は、環境変化や新たな生息環境に適応するために、自身の体を変化させて生きるにもかかわらず、人類はその秩序から逸脱し、体に他物を着装し、さらに不要とも思えるような色や模様を表層に描き、集団や社会を形成してきたからである。
