物作りのSaaS型マネジメント「アヤトリ」 ITで業界の課題解決

2019/11/18 06:29 更新


 「アパレル業界の物作りはアナログな部分が多く、テクノロジーの進化が他業界に比べて遅れている」と話すのは、繊維・アパレル産業向けのSaaS型物作りマネジメントサービス「アヤトリ」を提供するディープバレー(東京)の深谷玲人社長だ。アパレルの生産業務をデジタル化することで仕事の効率を上げ、業界の様々な課題解決を目指す。

(友森克樹)

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 深谷さんはアパレルメーカーや小売り企業数社に10年間勤めた後、ITベンチャー企業に転職。18年5月に独立・起業し、今年1月、アヤトリのベータ版をリリースした。アパレルメーカーやOEM・ODM(相手先ブランドによる企画・生産)企業、商社、中小ファッションブランドなど約40社の企業でテスト運用し、7月に本格リリースした。来春には、在庫過多の解消につながる可能性のある新機能を追加する。

◆製造トラブルゼロに

 アヤトリは「製造トラブルをゼロに」という理念のもと、アパレル業界の物作りをマネジメントするために作成した。川上から川下までのコミュニケーションの円滑化や情報の一元化で、生産過程を可視化し、ヒューマンエラーを予防、業務の効率を上げる。

 「プロダクトスペース」と呼ばれる、製品ごとに設けることができる利用者間の共有スペースを使い、その製品にひもづく「タスク管理」「ファイル共有」「コメント」を活用しながら、製品仕様書を完成させていく。

 工程ごとに任意の相手をスペースに招待し、コミュニケーションを取ることができる。電話やメール、ファックス、LINEなど企業や人によって様々なコミュニケーションツールを使う必要がなくなるほか、コメントの履歴やタスクの進行状況を製品ごとに自動で記録してくれる。製品ごとに関連データをひとまとめにできるため、無駄な確認作業も軽減できる。

 プロダクトスペースを作成できるのは1人当たり月額1万円の有料会員のみだが、スペースに招待される側は無料会員でも利用できる。現在、有料会員として利用しているのは10社程度で、付随する無料会員は100人以上いるという。

作業工程ごとに担当者とコミュニケーションがとれる

◆在庫過多の解消に光

 来春には「縫製仕様書、検品書、加工指示書のデジタル化」「AI(人工知能)・OCR(光学文字認識)」「言語翻訳」(まずは英語のみ)の三つの新機能を導入する。AI・OCRと言語翻訳はオプション料金とする。

 これらの機能を活用することで、手書きの仕様書など様々なフォーマットで管理されている書類をデジタル化し、デザイナーや生産管理、パタンナーなどの物作り業務を効率化する。

 デジタル化した書類のデータを言語翻訳することで、翻訳にかかっていた時間・金銭コストを削減できるほか、海外からの受注も見込める。日本のサプライチェーン全体の生産力が向上することで、「製造ロットの低下やリードタイムの短縮につながるかもしれない」と期待する。

 業務がアナログであるために「物作りに集中できる環境が整っていないことがアパレル業界の大きな課題」と深谷さん。アヤトリでサプライチェーン上の様々な問題を解決し、「より良いクリエイションや物作り、戦略立案といった重要な業務に時間を割くことのできる環境を創造したい」と意気込む。

「より良いクリエイションや重要な業務に時間を割ける環境を作りたい」と深谷社長


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