山本寛斎の哲学とクリエイションを継承する寛斎スーパースタジオ(東京)は、25年春夏物から新生「カンサイマン」をスタートした。桐生産地の刺繡を軸にした日本の高い技術力を強みに、海外市場の開拓を目指す。今年1月に続き6月にもパリで展示会を開いた。
(大竹清臣)
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カンサイマンは80年代にメインの「カンサイ」ブランドの別ラインとして、スカジャンやスタジャンを主力にしたリアルクローズのメンズウェアを提案していた。90年代初頭にコレクションを終了してから休眠状態だが、今でもビンテージ市場で多くのマニアックなファンに愛されている。
復活のきっかけは、22年のメタバース(インターネット上の仮想空間)・NFT(非代替性トークン)関連領域を通して人を元気にする実験的なプロジェクトだった。プロジェクト開始時は、寛斎を象徴するアイテムであるスカジャンを制作。デジタルファッションブランド「NauGhtEd」(ノーテッド)と協業した3Dスカジャンをメタバース上のギャラリーで発表した。だが、改めてフィジカルの大切さに気づき、リアルでのブランド価値向上に着手した。
新生カンサイマンは、60年代から日本のモードを支えてきた桐生産地と組んだ。横振り刺繍の伝統工芸士の大澤紀代美氏をはじめとした桐生のクラフトマンシップと、当時寛斎の右腕だったディレクターらのクリエイションチームによって生み出された刺繍をシグネチャーとしたコレクションを出した。
1月のパリの展示会で見せた25年秋冬物は、米ロサンゼルスや韓国のセレクトショップ、欧州のショールームなどから好評だったものの、刺繍入りのスカジャンが200万円するなど価格がハードルとなり、取引には至らなかった。6月の展示会(26年春夏物)ではジャカードの虎柄の上に刺繍したスタジャンをはじめ、虎を迷彩柄にしたパンツなどカジュアルウェア12型を出した。前回の反省を生かし、中心価格を日本円で15万~30万円に抑えた。

「本質を磨き続け、現代的にアップデートしたクリエイションで米国やアジア若い世代にアピールしたい」としており、早期に海外卸先の獲得を目指す。