秋田県には「ちょうどいい」を意味する「あんべぇいぃ」という方言がある。秋田県内に15店を構える「グランマート」は19年、総菜のミニパック「あんべぇいぃ」シリーズを発売した。すると総菜部門の店舗平均日販は約60万円から約80万円に3割増、総菜部門の売り上げ比率は10~13%から16~17%に跳ね上がったという。
全社でブランド化
佐々木一輝・デリカSVは「正直、面倒なのでやりたくなかった。でも、ポンポンと勢いよく売れる。それ目当ての来店も増えて店舗が活気づく」と声を弾ませる。
高齢者の少食需要、共働き世帯の使い勝手など、少量多種の「もう一品」ニーズに的中した格好だが、注目すべきは「さらに少量化」を図ったことだ。あんべぇいぃは「約100グラム・約100円」が基調。品数は現場裁量によって50~60品(総菜約300品中)。それまで総菜のサイズは「大・中・小」の3種だったが、「大・中・小・あんべぇいぃ」の4種になり、「1対6対3」だった販売比率は「1対2対2対5」に一変した。あんべぇいぃの躍進を受け、生鮮三品でも同様の商品化を推進。全社を挙げ、あんべぇいぃシリーズのブランド化に努めている。
選べる楽しさ
一方、秋田県北部を拠点に28店を展開する「いとく」は昨年、お値打ちにぜいたくを味わえる「プチ海鮮丼シリーズ」を開発。高級志向のミニ海鮮丼7種類(ウニ・イクラ・マグロなど)を税抜き398~480円で提供し、週末2日間・全店で約5500食・約200万円を販売。少量多種の高級需要に手応えを得ている。
千葉靖・惣菜バイヤーは「値上げラッシュの中、『買い物を失敗したくない』という機運が高まっている。本品は味見に好適で、気に入った方は二つ買って一食にする傾向がある」と説き、「高級志向のミニ商品はさらにニーズが高まると思う。今後も種類の充実に努める」と期待を込める。
秋田県の人口は1956年の約135万人をピークに減少を続け、昨年90万人を割り込んだ。65歳以上の高齢者比率も全国トップの約40%に達する。人口減と高齢化は秋田県に限らず全国的に迫られる課題。あんべぇいぃシリーズの健闘は、人口減に向き合う好例として注目され、全国各地から同業者の視察を集めている。
佐々木デリカSVは「面倒な手間ほど求められる。選べる楽しさがリピートを呼ぶ。客層に合わせて手数を増やす大切さを再認識。地元スーパーならではの総菜開発を目指す」と意欲的だ。逆境に屈せず住民に寄り添う奮闘が注目される。
(日本食糧新聞社 岡安秀一)
