《話題を追って》16年春夏欧州デザイナーコレクション
ファッションを楽しく彩る
16年春夏デザイナーコレクションは、ここ数シーズン続く柄のトレンドがさらにパワーアップした。スタイルにインパクトを与えたのは、遊び心のある〝プレイフル〟な柄。アーティスティックな文字やクスっと笑ってしまうような模様が服を楽しく彩った。服の形に大きな変化がない分、柄が服を新鮮に見せる重要なカギになっている。(青木規子)
「ファッションの楽しさ」「遊び心のあるスタイル」が注目されるなか、プレイフルな柄は小物でじわりじわりと市民権を得てきた。「アニヤ・ハインドマーチ」では、黄色いスマイルや「OOPS!」の文字をアップリケしたバッグがヒットし、「フェンディ」では愛らしいキャラクター「バッグバグズ」を描いたミニバッグが15年春夏の人気商品となった。いずれもポップでカラフルな柄を、上質なアイテムに落とし込んでいる点が特徴だ。
ウエアに広がる
そんな流れが、16年春夏はウエアに一気に広がった。カラフルな星やハートに加え、ギター、風景、人の顔など様々な柄が服を彩っている。
なかでも、表現が多様化したのは文字のデザインだ。ただ文字を並べるだけではなく、アーティスティックな表現が目を引いた。
アーティストと協業してデザインする「イーチアザー」は、ひねりの利いた文字デザインをシャツやTシャツに落とし込んだ。ゴシック体の文章の一部分を手描きで書き直して文章の意味を変えたり、つぶやくように点々と単語を並べたり。すっきりとした柄に含まれる知的なユーモアが、服をモダンに見せた。
久々に復活しているブランドロゴの使い方も楽しい。ミラノの若手マッシモ・ジョルジェッティによる「エミリオ・プッチ」は、滑らかな筆記体のブランド名を刺繍で表現し、「ロエベ」はブランドの織りネームをはぎ合わせてプルオーバーやパンツを制作した。
コレクション後も柄を主役にした動きは続いている。先日、オープンした「モンクレール」の銀座旗艦店でも、ロサンゼルスの新鋭アーティストによるポップなキャラクターを描いた限定商品が話題になった。
あるバイヤーは、16年春夏シーズンの特徴を「作り手も買い手もサムシングニューを求めているシーズン」と評した。その一つとして、柄の楽しさを探究する動きは続きそうだ。
(写真=大原広和)
繊研 2015/11/30 日付 19365 号 3 面