服飾系専門学校には、専門分野に特化した教育内容にひかれ、目的意識を持つ意欲の高い学生が集まっている。高校から服飾を専攻した人、大学などの既卒者、社会人経験者など多様な学生が、知識や技術の修得、課題の制作に励んでいる。学内外のコンテストに意欲的に挑戦したり、学内イベントでまとめ役を務めたり、独自ブランドを立ち上げたり、主体的に学び、活動の場を広げる精力的な学生も多い。自身の夢の実現や可能性を広げるために頑張っていて、各校が期待をかける専門学校生の思いや学生生活の一端を紹介する。
新天地で自分らしさ追求
ヴォートレイルファッションアカデミースーパーデザイナー学科3年 片山公貴さん

地元の専門学校で学び、卒業後も「デザインをもっと学びたい」と関西の専門学校に入学。デザインコンテストで大阪文化服装学院(現ヴォートレイルファッションアカデミー)のスーパーデザイナー(SD)学科生の作品を見る機会があり、その完成度に驚いた。「今の環境のままで、クリエイションを磨けるだろうか」と悩み、思い切って25年度から同校のSD学科2年に編入した。
アイデアやデザインの発想を重視する欧州のデザインアプローチ法を取り入れた授業では、リサーチやコンセプトを設定する作業にも時間をかける。「デザインコンテスト対策の授業があるし、同じ熱量を持つ先輩や同級生との会話も刺激がある。飛び込んでみて良かった」と振り返る。
編入した年は、意欲的にデザインコンテストに挑み、数々の受賞を実現した。「最初に獲りたかった」という「第25回YKKファスニングアワード」で入賞。「アジア新鋭デザイナーファッションコンテスト2025」では、ゆがみやねじれをテーマに、独自の造形テクニックを具体化した作品で、銀賞を獲得した。
デザインについては「テキスタイルで差別化するというよりは、パターンやシルエットで、もっと〝自分らしさ〟を追求していきたい」と考えている。自らが納得するまで課題に取り組むなど、粘り強さや向上心がある点も片山さんの長所だ。
3年生になった今年度はマイブランド作りを本格的にスタートする。直近の目標は、現在制作中の作品でセレクト店のバイヤーから注目されること。「海外のデザインコンテストにも挑戦したいし、学外へマイブランドの期間限定店も出したい」と意欲を燃やす。
好きを原動力に成長
上田安子服飾専門学校ファッションクリエイター学科パターン専攻3年 水野綾香さん

着せ替え人形が好きで、人形用の服を手縫いで作るような子供だった。ウェディングドレス店のショーウィンドーを見て、幼少期から「ドレスを作れるようになりたい」と漠然と憧れを感じていた。
高校は進学校だったが、卒業後は服飾を学びたいという強い思いがあった。進路で悩んでいた時、担任の先生の「あなたの行きたいところに行きなさい」という一言に背中を押され、直感で一番、通いたいと思った上田安子服飾専門学校に入学した。
1年生の時は、周りが高校から服飾を学んでいる人たちばかりで、追いつくのに必死だった。「好きな事だから、投げ出さずにやろう」と、休日も課題に向き合った。
「パターンを引いて、トワルを組んでいる時は、時間を忘れてのめり込むほど楽しい」ことに気づき、2年次にパターンを専攻した。パターンメイキング技術検定の2、3級に合格するなど、日々の学びが結果にも表れた。
「限られた時間の中で、自分との闘いだった」と振り返る。本番で緊張しても手を動かせるように、何度も練習して手で覚えてから挑んだ。「今年は1級に挑戦したい」と意気込む。
26年6月に開催された「上田学園コレクションプレタポルテ2026」では、水野さんが考案したテーマ「私の反骨心」が採用され、パターン専攻の仲間とともに、現代のルッキズムに対する各自の思いを服に昇華した作品を発表。八刺しをあえて表に出し、内なる叫びを表現したジャケットなどを作った。
パタンナー志望で、就職活動を進めている。「私が作ったから着ていると言ってもらえるような服の作り手になりたい」と話す。
産地に学び表現広げる
名古屋ファッション専門学校テクニカルクリエーション科3年 鷲尾果那さん

高校時代から服作りに興味を持ち、将来はファッション業界に進むことを決めていた。進学先は「先生や校舎の雰囲気が良かった」ので名古屋ファッション専門学校を選択。オープンキャンパスでの丁寧な対応も決め手になった。
高校では縫製やパターン作成を学びながら独学でも知識を深め、入学後は基礎から技術を習得した。1年次にはシャツやスカート、ワンピース、パンツを制作し、パターンメイキング技術検定3級を取得。2年次にはジャケットやボトムの制作に取り組み、より高度な技術を身に付けた。
転機は、TGC地方創生プロジェクトとBISHU FESの協業による新規デザイナー発掘プロジェクトへの参加だ。「紡ぐ、繋(つな)ぐ」をテーマに、尾州産素材をふんだんに使用した作品作りに挑んだ。愛知県一宮市内の機屋や生地店を訪ね、地域のテキスタイル産業への理解を深めながらデザインを形にし、入選を果たした。
同校のファッションフェスティバルNFFFでの作品は、人の内面に秘めた感情をテーマに制作。「こわい」「ふあん」といった言葉をデザインの切り替え線として落とし込み、3DCAD(コンピューターによる設計)を活用してシルエットを構築した。シルエットに納得がいかず、締め切りぎりぎりで全て作り直すなど試行錯誤を重ね、奨励賞を受賞。「自信につながった」と振り返る。
現在はデザイナー職を志望して就職活動を進めている。「ブランドの顧客に応えられるデザイナーになりたい」と抱負を語る。
後輩には「テキスタイルの知識を深め、マーケットリサーチを日常的にすることが大切」とアドバイスする。
提案する縫製職目指す
文化服装学院ファッション高度専門士科4年 神田崇路さん

小さい時から折り紙が好きで、ピアノやダンスを習い、家でホールケーキを作るなど手先が器用だった。高校でライフデザインコースを専攻し、保育、調理、和裁、洋裁の全ての検定で1級を取得。多くの選択肢から、文化服装学院出身の担任の薦めもあり服飾の道に絞り、文化に進学した。
4年制の高度専門士科で、デザイン、パターン、VMD、販売など幅広く学び、自分の可能性を試してきた。課題の制作では毎回、独自にポケットやファスナーの仕様など新しい技術の習得に挑戦。苦手だったデザイン画も練習して上達しつつ、デザイン画を上回る完成度の高い作品を作る技術力が評価され、2、3年次の文化祭では担当作品の縫製のまとめ役を任された。
自分の強みの器用さや丁寧さを生かし、技術職を目指すことを決意したのは2年の頃。仕様書で決められた自由度の少ない仕事でなく、「デザイナーのアトリエに入り、コレクションのサンプルで様々な仕様を提案できる縫製職になりたい」と話す。方向性が決まり、袖の本空き仕立て、くせ取りや丸みを出すアイロン技術など、独習で高度な技の習得に励んでいる。
2年の修了制作のドレスが結婚式向きだったので、先生の勧めで3年次にウェディングドレスのコンテストにデザイン画を書き直して応募。最優秀賞を受賞し、デザイン画も縫製技術も評価され、自信がついた。元々オートクチュールドレスが好き。最終的には欧州の高級メゾンのアトリエで、縫製の仕事をしながら学び、成長を続けることが夢だ。
今はマイコレクションの制作に注力中。レッドカーペットを歩く女優を一体一体イメージし、生地から作り、シンプルながら凝った仕様で、体のラインをきれいに見せる上品な光沢のあるドレス9体で構成する予定。学んだことを詰め込み、方向性を示す作品にしたい考えだ。
コンテストで研鑽重ねる
国際トータルファッション専門学校(NITF)ファッションデザイン科3年 長谷川悠人さん

子供の時からサッカーと絵を描くことが好きだった。高校生の頃、言葉に出せない悩みや感情、思考を表現したくなり、美大やファッションの学校への進学を決意。NITFに入りデザイナーを目指すクラスを専攻した。ミシンの糸のかけ方も分からず、パターンも初めてだったが、服の構造を一から理解していくことが楽しかった。
1年の後期には課題でコンテストへの応募を始め、北海道のN1モードグランプリで、同校で1人だけ1次審査を通過。内面のゆがみを人間らしい魅力と捉え、ゆがんだ線で構築した服をショーで披露した。扱ったことのないシカ革やフェイクレザー、シンサレートを使い、曲線の模様を全面にステッチで描いて完成させた作品が、4位相当の賞を受賞。「コンテストで、自分のブランドを持っている学生や他校の意識の高い人に出会え、刺激を受け、方向性が定まってきた」と2年への進級時、3年制から4年制に転科した。
学校の方針もあり、2年次は2ケタ近いコンテストに応募。コンセプトを深掘りし、伝えたいことを形にするため、デザイン画を何枚も描きながら加工や技法を調べ、思考回路を広げる研鑽(けんさん)を重ねた。四つのコンテストで最終選考に進出し、81年の歴史を持つ同校で初めて装苑賞で入賞を果たした。
起伏をテーマに、「立体的で迫力がある」と審査員のコシノジュンコさんに評価されたデザイン画をステンレスメッシュを使い、立体パターンに挑戦して作品化。「ベストは出せた。今が1番充実している」と話す。
コンテストで世界的なデザイナーに相談でき、将来の進路につながる人脈が広がった。今後も発想力や技術力を磨く機会と考え、多くのコンテストに挑戦し、次の装苑賞を取るのが夢。デザイナーのアシスタントとして実践的な戦い方を学んでから、自分のブランドを立ち上げる計画だ。
校長推薦・ウチの逸材
心を動かす服作り
愛知文化服装専門学校デザインマスター科3年 川合香保さん

元看護師という異色の経歴を持つ川合さんは、総合病院に約4年間勤務していた。気分を高めてくれる服の存在に救われた経験から、「今度は自分が人を元気にできる服を作りたい」とアパレルの道を志した。穏やかな校風と自分のペースで学べる環境に魅力を感じ、愛知文化服装専門学校に進学した。
入学後すぐに挑戦した京友禅サリー図案コンペでは日本とインドの文化をつなぐハスの花をモチーフにした作品で金賞を受賞。実際にサリーとして製作・展示されたことが大きな自信につながった。尾州産地の翔工房との産学連携では生地作りから携わってスーツを制作し、ファッションショーで披露。物作りの奥深さを実感した。
現在は創立90周年記念ファッションショーの実行委員長として多忙な日々を送る。「自分にとってはチャレンジ」とさらなる成長を目指す。
将来はアパレルメーカーのデザイナーを志す。デザインから生産管理まで幅広く学びながら、人の心を動かす服作りに挑戦する。
直感信じて服飾の道へ
中部ファッション専門学校スペシャリスト学科デザインコース3年 森園海斗さん

きっかけは高校3年生の時に訪れた古着店だった。店員から服飾専門学校の話を聞き、「直感的に心が動いた」。専門学校を調べ始め、自分と空気感がマッチした中部ファッション専門学校への進学を決意した。
入学してから1年間は、おしゃれに夢中で、「正直、何にも手を出してこなかった」。転機は2年生。同性の多くがビジネスマネジメントコースへ進むなか、森園さんは「何者かになりたい」との思いもあり、デザインコースへ進学した。
コンテストへ挑戦し続け、映画や音楽など幅広いエンターテインメントに触れ、意識的に視野を広げてきた。
尾州産地の翔工房との取り組みでは、コンクリートの隙間から伸びる草花から着想した作品を制作。職人の減少が進む尾州産地の次代を担う若手の姿を重ね合わせて作った。CFCファッションコンテストでは、コ・プロダクション部門のグランプリも受賞した。
「どんな時も、楽しみ、あきらめず、一歩踏み出す勇気をもって学生生活を送ってほしい」と後輩にエールを送る。
