《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》アンティーク雑貨を扱う「シベリア」 物と空間を体験するこだわりの店

2024/01/31 06:25 更新


 アンティーク雑貨を扱う「SHIBERIA」(シベリア)は24年1月、東京・目黒の学芸大学駅から徒歩10分の静かな立地に実店舗を開きました。代表の高本裕介さんは、年代や地域にとらわれず、「ロマンティシズムを感じる古物」を国内外で買い付けます。19年にECショップを始め、SNSを通じて魅力を伝えてきましたが、自分の店を持ち、一つの世界を体験してもらう価値を実感しています。

世界観を伝える

 「物の魅力に取りつかれている」という高本さんは、現在31歳。デジタルツールを使って起業することは、それほど難しいことではありませんでした。ECは顧客とのつながりも作ることができます。しかし、フィジカルな物が好きであるがゆえに「商品を手に取った時の質感や重みをリアルに感じてほしい」思いがありました。また、趣味性が高い品揃えなので、空間演出とともに、面白さや世界観を作る店を持ちたいと以前から考えていたそう。23年は7回催事販売を行い、接客すると「店はどちらにあるんですか」と必ず聞かれ、実店舗の重要性をさらに感じたそうです。友人の紹介で良い物件と出合い、出店を決めました。

「物の面白さに取りつかれている」と高本さん

 シベリアの店で「ときめく体験をしてほしい」と高本さん。限られた予算の中で「強すぎるこだわり」を表現したいと、内装業者に相談しながら、自らも手を動かして演出しました。入り口を増築して別の扉を付け、店内に入る前に一つの空間を作っています。床は板張りと絨毯(じゅうたん)で質感の違いを出し、天井はくり抜いてシャンデリアを設置。「いろんなマテリアルが混在し、詰め込み過ぎと感じるぐらいに」装飾しました。主張の強い装飾と商品の陳列のバランス感覚が独特で、来店する人を引き込みます。

こだわりを詰め込んだシベリアの店内

循環していくといい

 高本さんは「世の中には可愛い物があふれていることを伝えたい」とともに「それらが循環していくといいな」と考えます。10代後半で経験したファストファッションの流行に違和感を覚え、新しい物をじゃんじゃん作って消費するのではなく、すでにある物で、ライフスタイルを楽しめたらいいのではと思うからです。

シベリア代表の高本裕介さん

 コロナ禍で部屋で過ごす時間を大事にする人が増え、インテリアの需要が高まり、アンティーク雑貨を扱うECショップも増えました。「古物自体が盛り上がるのもうれしいですし、SDGs(持続可能な開発目標)の考え方とともに支持されるのはいいことだなと思います」。主な顧客層は20代後半の女性ですが、幅広い人に商品を届けて、店に足を運んでもらいたいとのこと。そして物だけでなく、人と混じり合うことも楽しみたいので、今後は店で作家やアーティスト、ブランドなどの展示イベントも行っていく計画です。

ルルムウ2022AWコレクションのルックの撮影でシベリアがプロップスタイリングを手がけた

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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