《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》レディスウェアの「スエサダ」 男性にも共感広がる

2024/09/30 10:59 更新


「スエサダ」25年春夏コレクション

 末定亮佑さんが手がけるレディスウェア「スエサダ」は、男性からも好評で、性別や年齢を問わず着用されています。想定していなかった客層に着てもらうことをポジティブに捉えて、ブランドを成長させています。

パリの生活が原体験

 末定さんは大学でグラフィックデザインを学んだ後に渡仏し、アンテルナショナル・ドゥ・クープ・ドゥ・パリを卒業。「アンソニー・ヴァカレロ」などで経験を積みました。帰国後、アパレル企業で企画・生産に携わって独立し、17年秋冬からスエサダを始めました。艶感と落ち感のある生地を好んで使い、マニッシュな色気があるスタイルを展開しています。銅色の金具や付属を生かした装飾もデザインの特徴です。

銅色の金具や付属品も特徴

 物作りのベースは、パリで生活した経験です。学生たちも夜は昼間とは違う服装に着替えてパーティーやイベントに出かけます。黒っぽい艶のある素材、露出のあるドレスにハイヒールを履き、化粧は濃いめです。こういったカルチャーは日本ではあまり浸透しておらず、場所や環境が整っていません。夜のシーンのニュアンスを取り入れつつ、「普段使いにもなじませられるようなあんばいにしたい」と考えています。

「スエサダ」はマニッシュな色気があるスタイルを展開している
洋服の表現に呼応し様々な人が着る

柔軟なデザインで

 末定さんは、性別や年齢を問わず、服の質感や雰囲気、ブランドの考え方に共感してくれる方に届けたいと考えています。ビジュアルに男性モデルを起用したことはありませんが、洋服の表現に呼応して様々な方が着てくれるようになりました。「ファッションに対する皆さんの感性が豊かになり、特に性別の垣根がなくなっている。服好きな人が探してディグって(掘り出して)たどりついているのだと感じます」と末定さん。

「毎シーズン一つでも新しいことに挑戦したい」と末定さん

 男性客がいることから、卸先から、左前のトップを右前にできますかと相談されることもありました。このような状況に、メンズラインを始めるのではなく、鼓ボタンを使って右前左前のどちらも可能にしたり、サイズ展開を増やしたり、柔軟なデザインで解決策を提案してきました。

 3年ほど前からは、男性誌『レオン』に掲載され、そのECでは男性モデルが着用した商品を販売しています。レオンの着飾った色気のある男性像は、パリの生活で日常的に目にしていて、彼らの装いをとてもファッションだなあと思っていたと言う末定さん。掲載の声がかかった時もしっくりきたそうです。

 今後は、ドレスコードを設けて「おめかし」して出かけるイベントを企画し、同じ考え方に共感する人々が集まる場作りに挑戦したいと考えています。また、ブランドのチームや組織作りに取り組みたいという目標があります。自分自身も上の世代の方に支えられて今に至ったことから、若手の受け皿にもなりバトンをつないでいきたいと思っています。

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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