ニューヨークのアート&デザイン美術館で、「カウンターカルチャー:アメリカのカウンターカルチャーのハンドメイドファッション」展が始まった。60年代から70年代のハンドメイドとその背景にあるカルチャーに焦点を当てた展覧会だ。ベトナム戦争や公民権運動、商業主義への反発が広がった時代に、自己の表現手段として生まれたハンドメイドファッションを検証している。
現代のハンドメイドといえば、まず思い浮かぶのは、ハンドメイドやビンテージ、1点物の売買オンラインサイトのエッツィだ。エッツィの昨年の総商品売上高は約28億4200万ドルと、前年比19%増だった。
株式公開し、大きくなり過ぎたエッツィを嫌がるクラフターたちもいるようだが、いずれにしても、ファッション業界が全般に苦戦している中、ビンテージや1点物、手作り感のあるものへの人気が高まっていることは間違いない。これは、大量生産された安価なファストファッションに嫌気がさし、他では買えないものを求める1つの表れだろう。
既成政治への反発は、自分でつくったり手を加えたりして自己表現をすることにもつながる。アンチトランプの運動の中で生まれた手編みの「プッシーハット」は、その好例だ。この展覧会の時代の気分とファッションには今に通ずるものが結構あって、そこにこの展覧会が今開催される意味があると感じられた。
展覧会は2フロア、5つのセクションに分かれている。リーバイ・ストラウス&カンパニーが1973年に開催したデニムのリメイクコンテストに寄せられた作品のコーナーでは、非常に素晴らしい凝った刺しゅうを見ることができる。作品を集めた展覧会「リーバイス・デニムアート」は、当時18ヶ月間にわたって全米で回覧され、20万人が見に来たという。
パッチワーク、キルト、タイダイなど、フォークアートのコーナーもある。フォークアートは、当時の政治と商業主義に反発して発生した、地方でコミュニティーをつくる動きの中から生まれたという。
Nina Huryn が1971年につくった、ハンドペイントを施したレザージャケット。「ウエアラブルアート」(着られるアート)の動きが広がった時代を象徴する1点として紹介されている。Nina Hurynの服は、エルトン・ジョンやフレディ・マーキュリーなどにも着用された。
音楽と演劇の影響も大きい。ママス&パパス、サイケデリックなヒッピーシアターグループのThe CockettesのFayette Hauserなどが着ていた衣装は、ステージにディスプレーされている。
1967年につくれらた、手刺しゅうとアップリケを飾ったアーミーコート(左)。ベトナム戦争反対の主張を表した1点とされている。
私が個人的にすごいなぁと思ったのは、さまざまなドイリーをパッチワークし、さらにリボンワークを加えたトップとパンツのセット。とにかく凝っている。でも、こういうテクニックがファッションショーで発表される服に出てきても驚かない。それが時代の気分と思うからだ。会期は8月20日まで。