刃物メーカーの貝印(東京、遠藤浩彰社長)は、22年から帽子のデザインコンテスト「カイ・ハット&ヘッドピース・コンペティション」を開いている。40年以上にわたって裁縫ばさみを作る同社は、ファッション分野の職人とも密接な関係を築いてきた。独創性や繊細さが求められる帽子作りには、特に道具の質が求められる。そのつながりから、帽子コンテストが始まった。
今年の授賞式は11月初旬、東京・渋谷サクラステージで開かれた。デザインテーマは「オリジンオブハット」(あなたにとっての帽子の原点)。前年比90%増となった応募作品の中から優秀賞として15作品が選ばれ、受賞者らは本審査に向けてデザイン画を元に制作した。
最優秀賞には、河内美和子さんの作品「ネイチャー」が選ばれた。河内さんは23年もファイナリストに残った実力派。天然素材で仕立てた帽子の有機的なラインの美しさが評価された。審査員を務めた帽子デザイナーの日爪ノブキ氏は「帽子を長年作ってきた人にしか分からないような繊細な技術がたくさんあった」とコメントした。審査員特別賞は、千頭龍馬さんの作品「コカゲハット」。漂白した葉を400枚重ねて、透明感のある繊細な帽子を作った。
授賞式の後には、ユナイテッドアローズの栗野宏文上級顧問や日爪氏らによるトークセッションを開催。貝印と日爪氏がともに開発したばかりの縫製ばさみ「O」(オー)の製作秘話などを語った。ストレスなく裁断できるはさみだといい、最優秀賞の副賞として贈られた。