近年、ホテル業界で特に目立つのが海外高級ブランドホテルの開業だ。インバウンド旅行者数が伸び続ける中で、怒涛(どとう)のごとく新規開業が続いている。特に東京や京都など人気の都市ではスパを伴うラグジュアリーホテルの進出が目立つ。
「バンヤンツリー・ホテルズ&リゾーツ」は、24年8月に「バンヤンツリー・東山・京都」を開業する。清水寺の隣に位置し、京都市街を見渡す東山の高台だ。全52室の小規模ホテルとして能舞台や天然温泉を設えた最高級クラスのスパホテルとなる。今後、オーストリア、ギリシャ、25年にはニセコにも開業予定だ。
多彩な施設が誕生
一方、同様にスパで知られる「シックスセンシズ・リゾート&スパ」(インターコンチネンタルホテルズグループ)は95年、モルディブに創業以来、徹底した自然派ラグジュアリーリゾートやスパの先駆者として世界を席巻してきた。そのブランドが京都市街に「シックスセンシズ京都」として誕生。妙法院と豊国神社の目の前で、祇園からも徒歩圏内。81室を展開し、多彩なウェルネス施設がシックスセンシズならではの本格自然派として体験できる。
東京にもゴージャスなウェルネス施設を整えたホテルが誕生している。24年3月、麻布台ヒルズに開業した「ジャヌ東京」だ。最高級クラスの代表格「アマン」の姉妹ブランドとして、世界に先駆け開業したジャヌ東京の部屋数は122室。それに対しウェルネス施設は4フロア、4000平方メートルもの広さを誇る。25メートルの室内温水プール、トリートメントルーム9室、ハマム(トルコ式サウナ)、バーニャ(ロシア式サウナ)などをしつらえ、一日中館内で過ごせると好評だ。広さと充実度は都内屈指、さらに8カ所もの飲食施設が自社運営で揃う。
心身の健康目指す
こうして徐々に国際的レベルになりつつある日本のホテル業界だが、もとはと言えば日本旅館が、今でいうスパホテルのようなウェルネスの役割を持っていた。天然温泉、湯治による健康回復、ヘルシーな食を伴う滞在だ。湯治目的の温泉宿には必ず自炊用キッチンも用意されている。日本では古くから医食同源を実践し体内バランスを重視、美しく元気になろうという温泉療法、鍼灸(しんきゅう)、マッサージなどが日常習慣として存在していた。まさに昨今の豪華スパホテルの原型が日本にも存在していたのだ。時代とともに進化を遂げ、極まる豪華さに目を見張るものの、目指す地点は時代を超えても心身の健康に他ならない。
(ホテルジャーナリスト・せきねきょうこ)