今年の全米小売業大会への私見+こぼれ話(杉本佳子)

2019/01/30 06:23 更新


毎年1月半ばにニューヨークで開催される全米小売業大会は、世界最大の小売業界のコンベンション&トレードショーだ。今年で108回目を迎えた。100年以上前にこういう大会をやろうと思いついた人たちを、心から尊敬する。

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1994年から毎年速報と連載を書いてきた私は、この大会にいろいろな思い入れがある。今年はとても嬉しい年だった。というのは、日本からの参加者数が外国からの参加者数としては6番目に多かったのである。長年カナダとブラジルが特に多く、フランス、イギリス、ドイツも多い。メキシコも多い方で、「近いから当然だよね」と思ってきた。今年はメキシコ379人、日本391人。今までを振り返ると、これは画期的な数字だ。

バブルがはじける前は日本からのツアーが組まれていたが、バブルがはじけた後はそれがなくなった。全米小売業大会では、ある程度の人数が来れば大きなセッションで出席者用に同時通訳をつけてくれるが、同時通訳がつかない人数まで減った。そうなると、講演を理解できるだけの英語力のある人しか来ない。一時期、日本からの参加者はとても少なくて、中国や韓国からの参加者の方が多かった。「もっと来ればいいのに」「勉強になるのに」「このままでは世界から取り残されてしまう」と思った私は、少しでも関心をもってもらえればと思いながら、毎年連載を書いてきた。

再び日本からツアーが組まれるようになったのは数年前。そして今回の参加者数。デスクに人数を報告したら、「この連載の影響、貢献は大きいと思います」と言われ、ますます嬉しくなった。連載は全6回で、1月30日開始予定。是非、ご高覧ください!(連載はこちらからチェック)

この大会は、速報や連載で紹介しきれないことがたくさんある。ここではその1つと、こぼれ話をいくつか紹介したいと思う。

 

全米小売業協会は、初日の夜に「全米小売業協会ファンデーション」のガラパーティーを開催する。教育や奨学金、業界が後押しするプログラムなどのためにオークションをする基金集めのフォーマルなイベントで、今年で5年目になる。

今年は320万ドル、日本円にして約3億5千万円が集まった。こういう金額を1回のイベントで集められるところに、アメリカの小売業界の底力を感じる。アメリカでは、労働人口4200万人中、4人に1人が小売業界に携わっている。若い人たちが入ってきやすい業界だろう。言い換えれば、やる気のある有能な若い人たちが誇りをもてる、魅力ある業界でなければ先がない。優秀な学生たちに奨学金を出し、サポートし、将来の人材に投資することは、業界として大事なことだと思う。


さて、参加者数が右肩上がりに増えているこの大会だが、プレスとアナリストの数も増えていて、今年は1000人近くになったという。プレスルームに一度に入れる人数は200人までとか。去年までは、コートをかけるラックがプレスルーム内にあったのだが、今年はそれがなくなり、代わりに鍵付きロッカーが持ち込まれた。といっても、ほんの数10人分しかなく、そこが埋まっていたら、お金を払ってコートを預けるしかない。去年まではなかったことだ。

ちなみに、プレスルームでランチボックスが用意されるのだが、10分くらいでなくなる。運よくランチをもらえる人はごく一部。生存競争激しいのだ。


セッションは、今年はいつになく女性がらみのセッションが多く、ガールズ・ラウンジなるものが初めて設置された。「ミー・トゥー運動」の影響もあるのではないかと思われる。


セッションはいろいろな部屋で同時開催されている。立ち見に加え、床に座り込んで聴く人たちも大勢いたのは、ミレニアルズに関するセッション。やはり、ミレニアルズへの関心は高い。


ところで、出席者用のバッジの裏には、「このバッジを再発行する場合は、元々の参加費と同じ額を払う必要がある」と書かれている。プレスとアナリストは参加費無料で入れるのだが、その場合も再発行に400ドルかかると書かれている!普通に参加する場合の参加費は、アクセスできる範囲などによって1000ドル台から3000ドル以上。そんな高額払って再発行してもらった人っているのだろうかと、考えるだけで恐ろしい。バッジをなくさずに無事に終わってほっとしている。ちなみに、学生証があれば非常に安く入れる。やはり、学生には優しい大会なのだ。


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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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