昨年10周年を迎えた「ケイスケヨシダ」は今春、初の直営店をオープンした。ビジネスとクリエイションに向き合う意識の変化を聞いた。
(須田渉美)
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ブランドを始めてから8年は自分一人で販売までやって、展示会の受注をベースに運営していました。一般のお客さんと心の距離が近い良さはあったのですが、3年ほど前にブランドの組織体制が整い、卸売りを軸に展示会やショーの在り方を見直しました。ファンに接する機会が少なくなって申し訳ない気持ちがあったのですが、直営店ができて、独特の空間で接客する適切な形になりました。
3年前に卸売りを本格的に始めたことは、ブランドの魅力を広く伝える転機になりました。以前の受注販売では、ファンはロングコートやジャケットなど象徴的なアイテムを買う傾向が強かったので、商品構成も偏っていました。大手のセレクトショップに扱ってもらうことで、しかるべき環境で接客ができるようにオーダーくださってシャツなど売れるアイテムが増えました。ディレクションの幅が広がったと実感します。
クリエイションに関しては、当初は内省的な姿勢で自己表現していました。この数年はビンテージの古着を元に、手を加えて、再構築しながら表情を出していましたが、自分の手法としてものになったので、次の10年は社会や時代を俯瞰(ふかん)して物作りを発展させたい。その時、その時の美しさやテクニックをミクスチャーしながら、情緒のある人間像を作っていきたい。
ファッションの豊かさ、モードのふくよかさを普通の暮らしをしている人たちに伝える、どう浸透させていくかは、大切なことだと思います。00年代前半の東京はアメカジ、ユーロビンテージといった専門性の高い古着屋が近隣にあって豊かな環境の街でしたし、ラグジュアリーブランドまで地続きに購入ができる現実的な存在だったんです。僕は若いときにファッションに救われた感覚があるし、その意識を大事にして恩返しをしたいと思います。
