サマータイムの終わりとベルリンの異常気象について(宮沢香奈)

2019/10/30 06:00 更新


熱派がヨーロッパ全体を襲い、フランスではなんと史上最高の45℃を記録し、命の危険を感じるまでの記録的な猛暑となった今夏。2003年には実際に熱派によってフランスで15000人の死者を出している。筆者の住むベルリンにおいても他人事ではない。昨年も連日35℃を超え、日本の夏のように湿度もあったため、エアコンのない生活で地獄も見たはずなのに、なぜ今年も扇風機を買わなかったのだろうか?”いざとなったら走って買いに行ける”という甘い考えを反省しながら、日本の関東地域で頻繁に起きている豪雨被害と重ね合わせた。

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自然が齎す災害はどんなことであっても対岸の火事ではないのだ。

ご存知の方も多いと思うが、ヨーロッパでは基本自宅でも店舗でも交通機関でもエアコンが装備されていない。エアコンと湿気が苦手で体調を崩してしまう自分にとっては、20℃台が平均でたまに30℃に達しても湿度がなくカラッとしていて気持ち良くて、夜10時まで明るい白夜のようなヨーロッパの夏が大好き過ぎて、夏は5年間で一度も帰国していないほど。

海のないベルリンでは、湖やプールが大人気となる。

海のないベルリンでは、湖やプールが大人気となる。

それなのに、今年は5月から気温が上昇し、途中気温が下がったりしたものの、8月末でさえ連日30℃を超え、不快な湿度もあった。ベルリンの夏の風物詩とされる実験音楽の祭典「atonal」取材時には、毎年夏の終わりを感じさせる冷んやりとした気温と同じく冷んやりとしたエクスペリメンタルサウンドが風情となっているのだが、今年は暑さと湿度で深夜になっても室内より外に人が溢れかえるというこれまでにない異様な光景を目にした。

さらに驚いたのは、9月に突入してもその暑さを引きずっていたことである。9月半ばだと言うのに24℃を超える日があり、思わず日本から来ていた友人とビアガーデンに行ったが大盛況だった。みんな考えることは同じである。個人的には、湿度さえなければ7、8月が夏らしく暑くなるのは歓迎だし、たとえ、エアコンがなくとも自然の多いベルリンでは、公園に行けば木陰で涼むことができ、郊外に行けば豊富な森林とマイナスイオンに囲まれた湖や避暑地が多数ある。


しかし、5月から9月まで暑いとなると、もはや、”夏は冷夏で涼しく、冬は長くて寒くて暗いベルリン”ではなくなってくる。冬に関してもここ数年暖冬が続いており、雪もほとんど降らず、マイナスに行く日も数えるほどである。うっかり過ごしやすくて嬉しいと思ってはいけない、世界規模で問題視されている地球温暖化の危機を感じずにはいられない。日々の生活で、プラスチックの使用を減らしたり、リサイクルを心掛けたり、よりエコを意識するようになったけれど、そんなことではもう追いつかないほど地球は爆発寸前なのではないだろうか。

3月31日(日)から始まったサマータイムが10月27日(日)で終わり、日本との時差も8時間となる。暑かったせいか、いつもより長く感じたサマータイムが終わる直前にいろんなことを思う。来年の夏前には今度こそ扇風機を買いに行かなくてはならない。


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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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