ベルリンはいつの間にかラーメン屋激戦区の街と化した。ここ数年でいったい何軒のラーメン屋がオープンしたのだろうか?しかも、味のクオリティー、独自のメニュー、日本と変わらない丁寧なサービスなど、どこもオリジナルのこだわりを追求しており、行列が出来ることも普通の光景となった。
ベルリンのラーメン屋の特徴としてもう一つ言えることは、ラーメン屋とは思えないスタイリッシュな内装の店舗が多いことだ。中でも今回紹介する「Buya Ramen」は、贅沢な敷地面積と洗練された内装には驚かされる。というのも、ここはもともと京都発の人気コーヒーショップ「%Arabica」があった場所。一部改装したものの当時のオープンキッチンやインテリアをそのまま使用しているため、和の要素を取り入れつつもモダンなラーメン屋の仕上がりとなっている。
そういった背景から洗練されていることは当然納得できるが、今のベルリンで人気を得るにはオシャレなだけでは到底難しい。「Buya Ramen」においては、立ち上げから日本人コンサルタントの矢口 順一氏が中心となって、新メニューの開発からコラボレーションイベントといったラーメン屋の枠を越えた仕掛けを勢力的に行っている。
10月1日には”World Sake day”と題し、同店の手前に店を構える日本酒専門店「SAKE36」とコラボレーションイベントが開催された。新メニューとして開発中の備長炭の焼き鳥をメインディッシュとした限定コースメニューと各メニューに合う限定の日本酒が提供され、大盛況となった。「SAKE36」は酒ソムリエの資格を持つ、世界的テクノDJとしても知られるリッチー・ホーティンがオーナーであり、オープン前からかなり話題となっていた。ベルリンらしいブラックミニマルな店構えに日本全国の酒蔵からこだわり抜いた日本酒を取り揃えており、”著名人の店”という看板だけではない本格派だ。
前述した通り、今のベルリンで人気店となるには、アイデアとこだわり抜いたオリジナリティーが必須条件となる。「Buya Ramen」がこの日提供した焼き鳥は、日本で食べても絶品と言えるほどのクオリティーの高さに友人たちと驚きの声を上げた。たっぷり肉厚でそれでいて柔らかくてジューシー、焼き加減もタレも絶妙だった。個人的にも一早く通常メニューに入れて欲しいと願うばかり。
他にもラーメン屋でありながら居酒屋のような気の効いたおつまみメニューが揃っているのも嬉しい。当然ながら日本酒との相性も抜群。「当店はラーメン屋ではありますが、同じ敷地内に焼き鳥も食べれる本格的な居酒屋を併設させて、いろんな形で日本食を嗜んでもらえるようにしたいです。」と、矢口さんは語る。
残念ながら”World Sake day”のイベントが終わってまだ間もない11月よりベルリンは2度目のロックダウンとなってしまった。現在は、持ち帰りとデリバリーのみの営業となっており、コロナウイルスのパンデミックの影響はすべての飲食店に大打撃を与えている。しかし、こういった状況下でも日本食の需要は変わらず高く、臨機応変に対応できる店舗が勝ち残っていくのだと実感している。
同店のあるクロイツベルク地区の一角は多種多様なレストランのオープンラッシュエリアでもあり、「SAKE36」の並びに新しくオープンしたばかりの辛さが売りの台湾ラーメン屋も大盛況である。一刻も早くロックダウンが開けて、再びこのエリアに活気が戻ってくるのを願いつつ、「Buya Ramen」の次なる仕掛けを楽しみにしている。
長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。