【パリ=小笠原拓郎】16年春夏パリ・メンズコレクションは、メンズモードの現状とビジネスのありようを率直に感じさせるシーズンとなった。テーラーリングという権威のあり方、ビッグメゾンの進めるマーケティング。その中で、デザイナーたちは自らの立ち位置とブランドの将来に向けて、それぞれのコレクションを作っている。
ランバンは、今のメンズ市場に必要なモードのあるべき姿を、安定したクオリティーで見せている。今シーズン、オールバックのモデルで見せたスタイルは格別に新しいものではない。しかしそこには、ここ数年で確立したランバンスタイルの高いクリエーションがつまっている。ベースとなるのは、今までランバンが提示してきたハンドテクニックが入ったエッジの立ったエレガントな男の服。
そこに、フィフティーズのイメージを感じさせるロックスタイルをしのばせる。スカジャンにワイドパンツ、レザージャケットにスリムパンツ、足元はジョージ・コックス風のコンビの靴をコーディネートする。インナーに合わせるのはネックラインが大きく開いたTシャツ。一方でクロップトパンツとハイカットスニーカーのナチュラルな雰囲気がありながら、もう一方でブラックレザーブルゾンのハードな雰囲気もある。ときには、ブルゾンをパンツの中にタックインして怪しげな男の雰囲気を醸し出す。強く主張しないけれど、確かなクオリティーとエレガンスを感じさせるコレクション。
サンローランはウエストコーストのイメージやグランジを取り入れたロックスタイルを見せた。エディ・スリマンらしいシャープなカジュアルスタイルを、ラグジュアリーな装飾で彩った。ライダーズジャケットは、パッチワークやフリンジ飾りなどバリエーションが豊富。レインボーラメのブルゾンにラメ刺繍のスカジャンなどきれいな色のブルゾンもいっぱい。ヤシの木の柄のカーディガンにニットキャップといったスタイルは、グランジの気分が混じっている。ショーの後半には、月面着陸のプリントブルゾンやロケットを刺繍したコートなどのアイテムが登場。
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