ロンドン・ファッションウィーク・セプテンバー2021 肌を露出してオプティミスティックに

2021/09/24 10:59 更新


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 22年春夏ロンドン・コレクションは、ワクチン接種証明か48時間以内のコロナ陰性証明の提示が義務付けられているが、会場内に入ればパンデミック(世界的な大流行)以前と変わらぬショーが繰り広げられている。マスクをしている人はほとんどいない。海外からの来場者はごく一部だが、新人たちのショーにも国内の有力ジャーナリストが集まっている。そんなポストコロナへの希望に満ちた今シーズンは肌を露出したデザインが目を引く。下着のアウター化と並び、サマーホリデーウェアがそうした傾向をけん引している。ルック写真や一方通行のショー映像では分からない背中が大きく開いたデザインが多く、リアルショーの大切さを再認識する。

〈フィジカル〉

 1年半ぶりの本格的なリアルショーの復活とあって、パンデミック前に合同ショーやプレゼンテーションで着々と成長してきた若手のソロデビューが相次いだ。

 筆頭はLVMHヤングファッションデザイナープライズを受賞したネンシ・ドジャカ。ランジェリーのような薄く繊細なレディスウェアはよりボディーコンシャスになり、のびのびと美しい女性像をアピールする。花びらを重ねたようなブラトップとともに目が釘付けになったのは、片足の太もも部分が上下に別れ、その隙間に花がはめ込まれたストッキング。三つ葉のようにも見えるその花飾りは、バンドゥとミニスカートをつなぐパーツになったり、ハイウエストのテーラードパンツの飾りベルトにも付いている。ランジェリーウェアのパートナーとして女性のボディーをドレスアップするテーラードも充実した。黒やベージュに優しいピンクも加わった。ラグジュアリーな完成度は高まったが、繊細すぎるアイテムの現実性には疑問もよぎる。その辺りをクリアした時に、時代をリードするオリジナリティーのあるクリエイションが花咲きそうな予感がする。

ネンシ・ドジャカ
ネンシ・ドジャカ

 エフティシアは、8シーズン目にして初めて単独のショーをした。テーラードを軸とした次世代のオフィスワーカーのワードローブをデザインしてきたエフティシア・カラモレゴウは、ロンドンの若手の中では稀有(けう)な存在だった。ところが、ポストパンデミックのポジティブな世界に目を向けた今シーズンは、女性像はそのままにオフィスを飛び出し、軽いニットやドレス、ショートパンツなどほっそりとしたシルエットのカジュアルスタイルを揃えた。ノースリーブのニットトップやシースドレスは、前からみると襟が詰まっているが、背中が腰まで大きくU字に開いている。この方向転換が吉と出るか凶と出るか、2、3シーズン見守りたい。

エフティシア

 スティーブン・ストーキー・デイリーがデザインするメンズブランド、SSデイリーのデビューショーは、本格的な芝居仕立て。デイリー自身も高校卒業後に参加していたナショナル・ユース・シアターの若い俳優たちが、名門私立学校のカルチャーを英国的なウイットをふんだんに盛り込んで紹介した。授業風景から寄宿舎での夜、スポーツなど四つのシーンからなる芝居に登場する俳優たち。アーガイル、ペーズリー、ラガーシャツ、トレンチ、ドレッシングガウンなどいかにも英国的な要素で構成されながらも、ユーモラスで可愛らしいスタイルにアップデートされた新作を身に着けている。ワーキングクラス出身のデイリーが、上流階級をハスに構えて見たひねりが利いている。デッドストックや蚤(のみ)の市で見つけたビンテージ生地を採用する一方、ヨークシャーの伝統的なシルク織物工場でオリジナルのペイズリー地を作るなど、素材も新人らしからぬ奥行きがある。演出に負けないオリジナリティーのあるコレクションで、頼もしいデビューを飾った。

SSデイリー

 ユハン・ワンのレースやギャザー、花柄を多用したロマンティックなワンピースやパンツスーツには、ピストルケースが添えられている。ウエストバッグやボディーバッグだけでなく、ポインテッドトウの靴にも張り付いている。連日のように報道される女性の殺害事件にノーをたたきつけた新作だ。ワンがこれまでデザインしてきたのは単なるかれんで優しいスタイルではなく、女性の芯の強さが見え隠れするもの。今シーズンは18世紀のアメリカの女性開拓者たちも着想源とあって、力強く走る馬のプリント柄も登場し、優しさと強さの交錯がより際立った。タイトルは「ジュリエット・ハズ・ア・ガン」。

ユハン・ワン

 モリー・ゴダードは、男女のモデルが入り交じる映像と、新作のコーディネートを人台に着せたプレゼンテーションでの発表となった。出発点は子供服。というのも、このコレクションのデザインをはじめたのは現在4カ月の息子がおなかの中にいた妊娠8カ月のとき。自身が子供時代に着ていた服、そして生まれてくる子供が着るであろう服から想像を広げた。子供のバランスの服を大きくして大人の服にするというスタイルは、シグネチャーのスモックドレスが腰までのトップになってゆったりとしたジーンズと合わせたり、ピーターパンカラーのつんつるてんのベビードールドレスになったり。腰丈のベビードールや裾がフレアになったTシャツをトップとして着るメンズモデルもいる。トラックパンツやジップアップカーディガン、バレエシューズなどリラックスしたアイテムも多い。もっとも、実際に手に取ってみると、レトロなハリ感のある素材が多用されていて、ネグリジェのような透けるコットンドレスは、しなやかな見かけによらずぱりっとしている。スタイリストである妹のアリスとの共作とあって、よりノスタルジックでパーソナルなコレクションが出来上がった。

モリー・ゴダード

 キコ・コスタディノフは、ファッションウィーク開幕に先駆け単独でショーを行った。会場となった東ロンドンのシェアオフィスビルは、古い建物をレトロヒューチャーに改装したもので、このブランドのイメージにぴったり。もっとも新作は、複雑なパッチワークや流線の切り替え、カーディガンを逆さまにしたり脇腹にも首穴があるセーターといった不思議なムードを残しながらも、肌を露出した伸び伸びとしたコレクションとなった。レディスを手掛けるディアナとローラのファニング姉妹が思いをはせたのは母国オーストラリアのビーチ。夕日のオレンジを多用し、貝殻をネックレスだけでなくラップスカートにも散りばめる。段染めニットのVネックトップの後ろはブラジャーを後前にしたように肩甲骨だけがカバーされ、背中が大きく開いている。シャツと透けるプリント地をレイヤードしたホリデー気分のゆったりとしたセットアップもある。そこに、かちっとしたテーラードパンツやパッチ&フラップポケットのジャケット、ボックスシルエットのスカートを差し込み、一筋縄ではいかないこのブランドならではのリミックススタイルを揃えた。

キコ・コスタディノフ

 マーガレット・ハウエルは、今回もハウエル本人を含むデザインチームが新作を説明する展示会とルックブックで発表した。「ショーも良いけれど、時間をかけて選び抜いた素材を手にとって見てもらいたい」。こだわりの新作は透け感のある英国製サマーウールの大きなポケットがついたメンズジャケット、麻のような風合いの日本製コットンで仕立てたオーバーサイズのレディスショートパンツ、黄色とエクリュが絶妙に混じり合いマットな温かみを放つスコットランド製コットンカシミヤのセーターなど。日本製のキャントンデニムのパンツやスカートはハイウエストでシンチバックがつき、パンツの股上は極端に長い。今シーズンのキャッチーな柄アイテムは様々な幅の10色からなるボーダードレスで、落ち着いたブルーやグリーン、赤錆(さび)色など、自然の風景から切り取ったカラーパレットが一着に詰まっている。ドレスはどれもゆったりとしたシルエットで、テントラインのノースリーブドレスは袖ぐりが大きく、トップと重ね着できるシーズンレスなアイテム。 全体的にリラックスしたシルエットだが、ハリのある上質な生地を多用してシャープかつクリーンな雰囲気を出している。

マーガレット・ハウエル

(ロンドン=若月美奈通信員)

 〝ローブ・ラングレーズ〟と呼ばれる18世紀の歴史衣装で幕を開けたエドワード・クラッチリーは、男性モデルがレースアップのボディスとパニエで膨らんだ大きなスカートを身にまとった。プレスリリースに引用したのは1728年10月5日のウィークリージャーナルの記事で、女装した男性たちが逮捕されたというもの。コレクションを通して、何世紀にもわたり繰り返されてきたゲイに対する差別や偏見を表現しようとした。コレクションを覆うチューダー調のパターンにはトレードマークを入れ、リサイクルポリエステルのブロケードに取り込んだ。Tバックのメンズレオタードなど刺激的なピースはあったが、基本的にはウェアラブル。さらに大げさにうたってはいないが、ほとんどが天然やリサイクル素材を使っており、隠れエコデザイナーでもある。

エドワード・クラッチリー

(ライター・益井祐)

 ジョン・ローレンス・サリバンは、都内で行ったフィジカルショーをライブで配信した。柳川荒士らしいフェティッシュなムードとテーラーリングを軸にしたコレクション。ボディースーツのようにサイドを大きくカットしたクロップトジャケット、太ももをカットアウトして素肌をのぞかせるパンツ、体を拘束するかのようなディテールのニットトップといったアイテムだ。テーラードコートやデニムベストには、サイドをジップアップにしてゼッケンのようにまとうアイテムもある。映画「アメリカン・サイコ」に登場するサイコキラーがまとうスーツスタイルやコンゴ出身のオリヴィエ・デ・サガザンによるパフォーマンスアートに登場するスーツと泥の表現が着想源となった。テーマは「MAD MUD」。(小笠原拓郎)

ジョン・ローレンス・サリバン

〈デジタル〉

 ヴィヴィアン・ウエストウッドは、19世紀に英イングランドのカウズを拠点に活動したイギリスのクチュリエ、レッドファーンに焦点を当てた。クラシカルなビュスティエ、英国的なタータンチェック、メンズライクなピンストライプのテーラーリング、パンキッシュなパール飾り。ヴィヴィアンの要素がミックスされている。テーマは「セーブアウアソウルズ」。「海賊の話をしながら、初代エリザベス女王の時代とヨーロッパの地に思いをはせた」という、98年に発表したコレクションが着想源になっている。

ヴィヴィアン・ウエストウッド

(青木規子)

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